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賃貸等不動産の時価開示

はじめに

1960年代頃から企業の国際化、資本調達の国際化、多国籍企業の出現により、各国間の会計基準が障害となったため、国際的な会計基準を設定する動きが始まりました。そして、1973年にIASC(国際会計基準委員会)が設立し、IAS(国際会計基準)の設定を開始しています。

その後、2000年にIOSCO(証券監督者国際機構)によるIASへの支持表明、2001年の組織改組、2002年のノーウォーク合意と、IFRS(国際財務報告基準)は徐々にその地位を確立していきました。(※IASは現在のIFRSに改称)

2005年にEUがIFRSを強制適用し、同時にEU市場で資金調達を行うEU域外企業にもIFRS及び同等な会計基準を義務づけたことで、本格的にIFRSが日本の会計基準に影響を及ぼし始めました。

日本はEUの同等性評価において同等と評価されたものの、26項目の追加開示等の補完措置を求められており、その1項目として投資不動産(賃貸等不動産に該当)があります。 日本はコンバージェンスを図るべく、2008年11月にASBJ(企業会計基準委員会)から賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準及び適用指針が発表され、2010年3月31日以後終了する事業年度末に係る財務諸表から、賃貸等不動産の時価開示が求められることになりました。

また不動産の鑑定評価においても、IFRSに対応し国際的な評価基準としてIVSC(国際評価基準委員会)がIVS(国際評価基準)を設定しました。IVSCはIASCの諮問グループの一員となっており、現在では資産評価に関する統一基準を作成するという基本方針の下、不動産に留まらず様々な資産について統一基準を提示しています。

  • IASC(国際会計基準委員会)国際会計基準委員会。国際会計基準審議会の前身。
  • IAS(国際会計基準)国際会計基準委員会。国際会計基準審議会の前身。
  • IOSCO(証券監督者国際機構))証券監督者国際機構。世界の国や地域の証券監督当局や証券取引所等から構成される国際的機関。
  • ノーウォーク合意2002年9月、IASBと米国のFASB(財務会計基準審査会)が、IFASと米国基準の中長期的なコンバージェンスについて合意した会議。
  • IFRS(国際財務報告基準)世界110カ国以上で採用されている国際財務報告基準。企業活動の国際化が進む中、会計基準の国際的統一が目的。国際会計基準審議会(IASB)によって設定され、2005年よりEU域内市場での統一基準として採用されている。
  • EUの同等性評価EU 域外の国の会計基準とIFRS とを比較し、IFRS と同等と評価された会計基準については、その会計基準により作成される財務諸表はEU 域内でそのまま使用できる。IFRS と同等か否かは、CESR(欧州証券規制委員会)による技術的助言をもとに、最終的にはEC(欧州委員会)が決定。
  • 26項目1.企業結合会計(持分プーリング法) 2.連結の範囲(SPEを含む) 3.在外子会社の会計基準の統一 4.株式報酬(費用認識) 5.企業結合会計(交換日) 6.企業結合会計(「取得した研究開発」の資産計上) 7.企業結合会計(負ののれん) 8.棚卸資産の会計(LIFO)、棚卸資産の会計(低価法) 9.関連会社の会計方針の統一 10.固定資産の減損テスト 11.開発費の資産計上 12.農業 13.株式報酬(新基準で必要な開示が行われない場合) 14.企業結合会計(少数株主持分の算定方法) 15.企業結合会計(段階取得) 16.保険契約(異常危険準備金) 17.工事契約(工事完成基準) 18.不良債権開示 19.廃棄費用 20.年金・退職後給付 21.企業結合会計(外貨建てのれんの換算) 22.金融商品の公正価値の開示 23.固定資産の減損会計(減損の戻し入れ) 24.資産除去債務 25.投資不動産 26.金融商品
  • コンバージェンス各国の会計基準を一つにまとめること。会計基準の収束を意味する。
  • ASBJ(企業会計基準委員会)企業会計基準委員会。財務会計基準機構の内部組織である日本の会計基準設定主体。
  • 鑑定評価不動産鑑定評価とは、国家資格者である不動産鑑定士が不動産の経済価値を判定し、その価格を表示することをいう。地価公示、地価調査、相続税路線価、固定資産税評価などの公的地価指標は、不動産鑑定士が行った鑑定評価等を基に価格を算出している。
  • IVSC(国際評価基準委員会)国際評価基準委員会。財務諸表作成に際しての資産評価基準等の作成、公表により、世界各国の基準の調和、開示が主な目的。

 

 

 

東京合意以降の日本の対応(主なもの)及び予定

2005年東京合意

  • 2005年4月 固定資産の減損会計完全実施
  • 2007年5月 会社法施行
  • 2008年4月 金融商品取引法(内部統制部分)
    棚卸資産に関する低価法適用
  • 2008年11月 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準
    賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針 発表
  •  
  • 2010年3月 賃貸等不動産の時価注記適用
  • 2011年6月 IFRSとのコンバージェンス終了
  • 2012年 IFRSへのアドプションを最終決定
  •   IFRS適用準備期間
  • 2015年 IFRS強制適用開始の可能性あり