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ケーススタディ・8 セットバック(敷地後退)を要する土地

 狭隘(きょうあい)な道路に面した土地に建物を建築しようとするとセットバックという言葉が出てくることがあります。建築基準法では都市計画区域と準都市計画区域内において、建物は道路に接していなければならないとされています。そして同法では幅員が4m以上でないと道路とは認められません。なぜ、道路の幅員が4m必要なのかというと、災害時などに緊急自動車が通行できるようにとか、通風や採光など一定以上の住環境を確保するためです。ところが実際には4m未満の道路にも建物は建っています。こういう場合、その建物は建築基準法422項の規定により、建築を許可されたケースです。 

 この規定は幅員が4mに満たない道路でも422項道路として指定されると敷地を道路から後退することにより建物の建築が許可されるものです。この後退をセットバックといいます。こうすることで4m未満の道路に接している建物が建替えられるたび、にそれぞれの敷地がセットバックして、いつの日か一本の道路の幅員が4mとなり、街並みが整備されます。ただし、建物の建替えには何十年もかかりますので、それまでは後退した敷地とそうでない敷地が混ざり合った状態が続くことになります。セットバックは土地を無償で道路として提供するもので、都市計画道路予定地の様に行政が買い取ってくれません。

 また、後退部分は建物の敷地として認められませんので、セットバックが大きい敷地は面積が小さくなり、そこに建築できる建物も小さいものになります。ただし、所有していても道路部分の土地の固定資産税、都市計画税は非課税とされます。

 

 セットバックの大きさはどの様に決まるのでしょうか。422項道路とされた道路には中心線が決められます。そこからそれぞれ2mのラインまで各自の敷地を後退します。つまり向かい合わせの土地で同じようにセットバックするわけです。ただし、道路の反対側が崖や水路などで、物理的に後退できない場合は、自分の敷地だけで幅員4mを確保しなければなりませんので注意が必要です。以上から、自分の土地が将来セットバックしなければならない場合にはその部分を減価として認識しておく必要があります。以下から、具体的な評価の方法を見ていきます。


 

 

Ⅰ 財産評価基本通達による評価

 

 財産評価基本通達によれば、「建築基準法第42条第2項に規定する道路に面しており、将来、建物の建替え時等に同法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地の価額は、その宅地について道路敷きとして提供する必要がないものとした場合の価額から、その価額に次の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。ただし、その宅地を244((広大地の評価))(1)又は(2)により計算した金額によって評価する場合には、本項の定めは適用しないものとする。」とあります。

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 この様に財産評価基本通達ではセットバック部分は70%減の評価、つまり30%は敷地としての価値を認めています。

この場合は全体に対して3.5%の評価減(19,300,000円/20,000,000円-13.5%)となります。でも建替えを行えば、その部分は道路となりますので、30%でも価値をやや高く評価していると言えるではないでしょうか。

 


 

 Ⅱ 不動産鑑定士による評価

 

 一般的に鑑定評価ではセットバックを未実施の土地については将来セットバックしなければならない面積については価値を認めないことが多いと思います。その土地に建築できる建物の延べ面積は敷地面積に基準容積率を乗じて計算します。

 したがって現在200㎡の土地でも、将来10㎡のセットバックがあるのであれば、敷地面積は190㎡を基に将来の建物を想定します(ただし前面道路の幅員はセットバックにより拡幅されたものとします)。これによれば道路幅員を4mとして、住宅地の場合は前面道路幅員による容積率の制限が0.4ですので基準容積率は160%(4m×40%)、これに対する敷地面積が200㎡と考えると建築できる建物の延べ床面積は320㎡(200㎡×160%)となりますが、セットバックをするので190㎡が敷地面積となり304㎡(190㎡×160%)が延べ床面積の上限です(実際にはその他斜線制限などが課される場合があります)。この場合は5(304320-15%)の評価減です。

 したがって、セットバック部分はもうないものとして評価するので、この段階で先の基本通達の評価よりは若干低い評価となっています。

この他、財産評価基本通達では宅地の総面積に対するセットバックの面積割合に基づき、土地の評価減を判定しますが、都市計画道路予定地の評価のようにセットバックによって残地の形状や規模が標準的な土地の大きさや形状と異なってしまい、利用上の制約が大きい土地ではそういった個別的な事情が十分に反映されません。

 さらに、残地が極端に狭小なものになる場合には、建物の建築上の制約が生じ、極端な場合には建物の建築ができないこともあります。このような土地は単独では売買されにくく、隣地の所有者などに買い取ってもらう以外はなかなか買い手が見つかりにくい土地になります。

 

 以上のように、財産評価基本通達ではセットバック部分についてのみ、阻害率や面積割合で評価減を判定しますが、鑑定評価では残された土地の個性についても十分検証して、その効用減を判定します。

 実際に不整形な土地で決められた容積率を消化しようとすれば、形の悪い建物を建築することは避けられません。こうした建物は使い勝手が悪く、建築コストも高めになります。反対に整形な建物とするには、容積率を使い切れず、それはそれで不経済です。

こうした実際の影響の程度は面積割合では的確に評価できない場合があります、それぞれ周辺の環境と土地の個別的な事情を勘案して総合的な観点からの判断が必要と考えられます。

 

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