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ケーススタディ・9 林地・雑種地

  林地 

林地とは

不動産鑑定評価基準上、林地とは林地地域にある土地(立木竹を除く)とされています。林地については、都市近郊林地、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地等に細分化されていますが、現況が山林となっている土地ということになります。この林地は、相続税の財産評価基準では山林に分類されています。

 

相続税の財産評価基準による評価

一般的に山林には路線価が定められていないため、評価倍率表を用いて評価が行われます。評価倍率表では、山林を純山林、中間山林、市街地山林に分類し、分類ごとに評価方式が異なります。純山林と中間山林では評価倍率表に書かれた倍率を対象となる林地の固定資産税評価額に乗じて評価額を求めます。市街地山林では、付近の宅地の価額に比準して求めます。

 

不動産鑑定士による鑑定評価

林地の鑑定評価額は、取引事例比較法による比準価格を標準とし、収益還元法による収益価格を参考として決定するとされています。また、再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきであるとされています。実務上は、林業として立木の栽培や売却を行っている場合を除いて、類似の取引事例を比準して得た比準価格によって鑑定評価額が決定されます。

 

評価実例の紹介

以前、林地を相続された方から、相続税の申告にあたって鑑定評価を依頼された実例がありましたので、ここで紹介します。対象となる林地は市街地とはさほど離れておらず、従来からある農家住宅と、新興住宅団地、山林、雑種地などが混在する地域に所在しています。財産評価基準による分類は中間山林で、固定資産税評価額に対する評価倍率は約80倍となっていました。対象林地の固定資産税評価額は1㎡あたり約30円でしたので、相続税上の評価額は1㎡あたり約2,400円となります。対象林地は中心市街地からも遠くはなく、周辺に宅地開発が見られることから、約80倍という高い倍率が定められているものと思われます。

この対象林地について、不動産鑑定評価を行ったところ、結果としての鑑定評価額は1㎡あたり約1,000円となりました。財産評価基準による評価よりも相当に低い価格となったのですが、この理由としては次のことが挙げられます。

 

◇行政的条件

前述の通り対象林地は市街地からほど近く、周辺には新興住宅団地も見られます。一見して、対象林地についても将来的には宅地化の可能性があるようにも見られます。しかし、この対象林地の所在する自治体において調査したところ、その可能性は皆無であることが判明しました。対象林地は市街化調整区域内に所在することに加え、この自治体では防災上の観点から標高80m以上の場所の宅地開発は許可をしないことになっていて、対象林地はこの規制にも抵触することが分かりました。

仮に、宅地開発許可が得られる地域であったとしても、対象林地が接する道路は建築基準法上の道路に該当しないため建築許可の取得は難しく、さらに埋蔵文化財包蔵地に該当しているため建築・土木工事にあたっては事前調査が必要となる可能性もあるなど、事業としての宅地化は相当に困難であることが考えられます。

 

◇規範性の高い取引事例との比較

林地の鑑定評価では、対象林地と競争・代替関係にある取引事例を収集し、取引事例比較法を適用します。この件で収集された取引事例は複数あり、いずれも1㎡あたり400円程度の事例でした。これらの事例は対象林地との比較において、市街地への距離や周辺の宅地化の程度などの地域要因が劣るため、適切な比較を行って試算された比準価格は1㎡あたり約1,000円となりました。この取引事例比較法は、対象林地の市場性を反映する手法で、実際の不動産取引市場の動向を的確に示すことができるものです。今回の対象林地のような不動産の時価を判定するに当たっては、最も優れた手法と言えるものです。

 

以上のように、単純に周辺の土地利用状況だけでは地域の地価水準は把握できず、個別の調査によってのみ知り得る情報が数多くあるため、十分な注意が必要となります。また、財産評価基準による画一的な評価では市場の実勢価格水準を把握することは難しく、実際の取引事例を基にした鑑定評価を行うことで適切な価格を知ることができます。

 


 

 雑種地

雑種地

雑種地とは、宅地、田、畑、山林、原野などのどの地目にも該当しない土地のことを指します。具体的には、資材置場や駐車場などがこれに該当します。雑種地のうち、市街化区域内にあるものについては概ね宅地と同じ扱いとなることが多いですが、市街化調整区域内の雑種地については周囲の状況などによってその取扱いが異なるため、その判定が重要となります。

 

相続税の財産評価基準による評価

財産評価基準による雑種地の評価は、評価対象地と状況が類似する付近の土地について評価した1㎡当たりの価額を基とし、位置、形状等の条件の差を考慮して評価することとされています。市街化調整区域内の雑種地で状況が類似する土地(地目)の判定をするときには、評価対象地の周囲の状況に応じて次の表により判定することとされています。また、付近の宅地の価額を基として評価する場合(宅地比準)における法的規制等(開発行為の可否、建築制限、位置等)に係るしんしゃく割合(減価率)は、市街化の影響度と雑種地の利用状況に応じて個別に判定することとされており、下表のしんしゃく割合によっても差し支えないとされています。

 しんしゃく割合.png

 

()1 農地等の価額を基として評価する場合で、評価対象地が資材置場、駐車場等として利用されているときは、その土地の価額は、原則として、財産評価基本通達245((農業用施設用地の評価))に準じて農地等の価額に造成費相当額を加算した価額により評価します(ただし、その価額は宅地の価額を基として評価した価額を上回らないことに留意してください。)。

()2 の地域は、線引き後に沿道サービス施設が建設される可能性のある土地(都市計画法34条十四号、432項、都市計画法施行令361項三号ホ)や、線引き後に日常生活に必要な物品の小売業等の店舗として開発又は建築される可能性のある土地(都市計画法34条一号、432項、都市計画法施行令361項三 号イ)の存する地域をいいます。

()3 都市計画法34条十一号に規定する区域内については、上記の表によらず、個別に判定します。

 

③不動産鑑定士による鑑定評価

雑種地に関して不動産鑑定評価では、周辺地域及び対象土地の利用状況等に応じて評価方法を検討することになります。いずれにしても、周辺地域の土地利用動向、行政的条件等の地域要因の分析と、対象土地の画地条件や接道状況、開発許可や建築許可の可否等の個別的要因の分析を行って個々の案件に応じて対応することとなります。

一般的に市街化区域内の雑種地では、通常の宅地と同様に開発許可や建築許可が得られることが考えられるため、取引事例比較法、収益還元法、開発法を適用して鑑定評価が行われます。一方、市街化調整区域内の雑種地では、周辺地域の土地利用動向と対象土地の個別的な条件による影響の判定が重要となります。この場合において、宅地化の可能性が低い土地では取引事例比較法による鑑定評価が適切となり、対象土地と同様に宅地化できない土地の取引事例を収集して比較検討を行います。また、宅地化の蓋然性があると判断される場合には宅地見込地と判定され、取引事例比較法の他に、宅地化された後の価格に宅地化に要する費用や期間を考慮して得た価格を求めることになります。つまり、宅地利用の可能性に応じて評価方法は変わることとなり、上記の財産評価基準による表のように状況が類似する付近の土地価格に周辺の市街化の影響度によって減価率を乗じるという簡易な方法よりも、対象土地の実態に即した評価を行うことになります。

いずれの場合においても、不動産鑑定評価では個別の土地に関する地域要因及び個別的要因について詳細な調査・分析が行われ、地域の特性と対象土地の個別性を十分に加味した評価が行われます。さらに、現実の市場において成立した取引事例を多数収集し、直近の時点における実際の地価動向を踏まえた評価が行われることからも、不動産鑑定士による鑑定評価は、画一的な財産評価基準による方法よりも具体的な時価を把握するには適していると言えます。

 

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