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ケーススタディ・10 定期借地権

定期借地権は、1992年に始まった比較的新しい制度です。19928月に施行された新借地借家法に基づいてこの定期借地権の制度は始まりました。従来の借地権(定期借地権と区別するために普通借地権と呼ばれたりする場合もある)では、借地人側の権利保護が強化されていることから、一旦土地を貸すと半永久的に土地が返ってこないと言われ、そのため新規に土地を貸すことがほとんどなくなってしまいました。そこで、新規に土地を貸すことを促進するために創設されたのが定期借地権という制度です。

 

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 上記のように、定期借地権にもいくつか種類があります。定期借地権は、期間が満了すると更新がないことから、借地上の建物をどうするかが問題になります。上記の内、一般定期借地権と事業用定期借地権では、借地人が建物を取り壊して更地にして返還することになっています。その点の例外が、建物譲渡特約付借地権です。

 これらの制度を活用して、定期借地権付住宅(戸建住宅)や定期借地権付マンションなどが供給されています。また商業施設や店舗では事業用定期借地権を活用しているケースも多くなってきました。

 


 

1. 定期借地権の評価

通常の借地権は、借主が借地契約を解消する意志がなければ、ほぼ半永久的に続くと考えられることから、国税庁の財産評価基本通達においても、借地契約の残存期間は関係なく借地権割合(路線価図や倍率表に記載されている)で、更地の○%としています。

しかし、定期借地権の場合、更新がないため、定期借地契約の期間がいつ満了するのかが重要な問題です。残存期間の短い定期借地権は、それだけ価値が低いと考えられるからです。

但し、まだ始まって20年も経過していないことから、実際にどのように定期借地権の価値が低下していくのかを実証的に分析することはできていません。そのため、評価方法も確立されているわけではありませんが、財産評価基本通達では以下の評価方法を提示しています。

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A評価時点(課税時期)の自用地としての価額

B定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額

C定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価格

D:評価時点(課税時期)におけるその定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率

E:定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率

 

評価時点の自用地価格(更地価格)をもとに、定期借地権等設定時の権利割合を乗じて、さらに経過年数に応じた価値の逓減率を考慮して求めるという考え方です。

 ここで、Bの借地権者に帰属する経済的利益の総額とは、①定期借地権等の設定に際して、借地権者から借地権設定者に対して支払われた一時金の内、借地契約の終了時に返還を要しないもの、②一時金の内、借地契約の終了時に返還を要するものの預託があった場合は、一定の算式によって計算した額、③定期借地権等の設定に際して、実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額がある場合は、一定の算式によって計算した額、の合計とされています。

 このうち、①は一般に権利金等と呼ばれるものですが、名称のいかんは問わず、返還されない一時金はすべてこれに該当します。②は保証金等と呼ばれることが多いです。借地契約の終了時には返還されるものですから、①とは異なり、全額を借地権者に帰属する経済的利益とはなりません。この一定の算式とは以下のものです。

 

保証金等の額-(保証金等の額×借地期間に応じた複利現価率)(保証金等の額×約定利率×借地期間に応じた複利年金現価率)

 

 これは、保証金等の額から、まずは借地期間終了時に返還する保証金等の額の現在価値分を控除し、さらに無利息でないときは、約定利率に応じた利息分も控除して求めるということです。無利息の場合は、上記の式で約定利率=0%ですから、後ろの括弧は考慮する必要はありません。要するに、預かり金とはいえ、預託期間が30年とか50年とかと長期にわたるため、保証金等の内に実質的に権利金等に相当する部分があると見なすということです。上記の式の内、複利現価率と複利年金現価率はいずれも基準年利率で計算します。また③にある一定の算式は、以下のものです。

 

差額地代の額×借地期間に応じた複利年金現価率

 

 要するに、実質的に贈与に当たる額が借地期間トータルでどれだけになるかを把握するということです。

 これらによって前記の①~③を求め、これらの合計が借地権者に帰属する経済的利益の総額となり、これを定期借地権設定時の宅地の通常の取引価格で割って、権利割合を求めることになります。これを定期借地権設定時の権利割合とし、これをもとに、残存期間分の複利年金現価率を全契約期間分の複利年金現価率で割った逓減率で、契約期間の残存分を考慮することになります。この逓減率は、下のグラフにあるように、当初は緩やかに減少しますが、期間が経過するごとに徐々に減少幅が大きくなり、借地期間を50年とした場合は、残存期間が13年を切った頃に当初の50%を切り、その後は急激に権利割合が減少していくことになります。

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 このように、この財産評価基本通達に基づく評価方法は、定期借地権の特性をある程度反映した評価方法だと言えます。また評価に当たって採用する利率も、金利動向を反映して見直されており、長期のものは現在は1.5%とされているため、現実的な評価ができるようになっています。但し、実際に個別具体的なケースに即して考えると、一時金の仕分けや差額地代の有無及びその額等、判断に迷うケースもあると思われます。特に事業用定期借地権の場合は、立地条件によっては相当高額な地代が支払われているケースもあります。そのような場合には、周辺地域の定期借地権の地代水準等を把握している不動産鑑定士にご相談いただければ、と思います。

 


 

 

2. 定期借地権の設定された土地の評価

定期借地権等が設定された土地(貸宅地という)は、財産評価基本通達では以下のように評価するとされています。

(原則)  自用地評価額-定期借地権等の評価額=貸宅地の評価額

(但書き) 自用地評価額×(1-定期借地権の残存期間に応じた割合)=貸宅地の評価額

この定期借地権等の残存期間に応じた割合は、

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となっており、この評価方法のいずれか低い方で評価することになっています。

また、一般定期借地権に関しては、以下の取扱いをすることが、平成10825日付の個別通達で定められています。

 

一般定期借地権の貸宅地 = 自用地評価額 - 一般定期借地権の価額に相当する金額

 

この一般定期借地権の価額に相当する金額は、

 

自用地評価額 ×(1-底地割合)× 逓減率

 

で求めるとされ、この式の中の逓減率は、前記の設定期間と残存期間の複利年金現価率の割合で求めます。また底地割合に関しては、通常の借地権割合に応じて、以下のように定められています。

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実際には、このような財産評価基本通達に基づく評価を基本にしつつ、不動産市場の実態や個別の事情を考慮した上で、適切な評価となっているかどうかを十分に確認する必要があります。特に期間が短い事業用定期借地権や、残存期間が短くなってきた場合など、鑑定評価を行なって時価評価することを検討された方が良い場合があると思われます。

 


 

 

3. 定期借地権の運営上の課題

定期借地権等やそれが設定された土地(貸宅地)の評価が必要になる場合以外にも、例えば賃料の増減額交渉が発生したりすることもあります。定期借地権の設定は、土地の貸し借りを行なっている訳ですから、貸主・借主があって、それぞれの利害関係に基づいて定期借地権等の設定契約を結んでいます。したがって契約内容に基づいて解決するのが基本ですが、賃料の増減額については、どの程度の改定が妥当か判断が難しい場合もあります。

またコンビニエンスストアなどの業態では、競争が激しく、出店と撤退の動きが頻繁であるため、最低でも10年以上の契約となる事業用定期借地権の利用はそれ程多くはないと思われますが、他の業態の店舗等において事業用定期借地権が利用されている場合では、実際の売上が出店時の想定よりも少なかった場合、それに応じて賃料の減額を要請されるケースも発生しているようです。

この場合、当事者間で合意できない場合には、調停→訴訟となるケースもありますが、そこまで行く前に、客観的に見てどの程度の賃料が妥当なのかを、不動産鑑定士に相談して把握し、交渉に臨むことも重要だと思います。

 

定期借地権の場合、事業用定期借地権でも最短で10年からと、契約期間が長期にわたります。その分、契約当初には想定していなかったことが発生する可能性も十分にあります。例えば、一方の当事者が倒産してしまったり、事業そのものを譲渡してしまったり、定期借地権を設定している土地が第三者に譲渡されたりというようなことが発生したりします。こうした場合に備えて、定期借地権設定時に契約書をしっかりと吟味して作成することが重要ですが、何かあった場合に気軽に相談できる専門家を見つけておくことも必要でしょう。

定期借地権等を巡っては、法律的な観点、税務的な観点からの専門家からのアドバイスが重要になってきますが、不動産の経済価値の専門家である不動産鑑定士が必要となる場面も多くあると思います。

定期借地権等の評価(定期借地権が設定されている土地の評価を含む)のみならず、賃料改定等の交渉やその他のトラブルが発生した場合等、積極的に不動産鑑定士に相談していただければ、と思います。

 

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