03-3556-1702(東京)
052-950-2771(名古屋)

ケーススタディ・11 市街化調整区域

 市街化調整区域とは

①  都市計画法における市街化調整区域の位置づけ

都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画に係わる法律であり、その区分として、市街化区域、市街化調整区域、そのどちらにも属さない非線引都市計画区域に分けられています。また、都市計画区域そのものにも属さない地域もあります。

今回は、その中でも土地の評価が難しい市街化調整区域(以下、調整区域)について述べますが、端的に申しますと調整区域とは、市街化を抑制すべき区域です。ただし、市街化を禁止すべき区域ではなく、「抑制」であるため、様々な原則-例外の規定、各自治体での取り扱いの違い等があり、土地の評価が難しい区域と一般的に認知されています。

 

②  抑制される内容

原則として調整区域は、都市計画法における開発行為の許可はされません。開発行為とは主としてa.建築物の建築、b.特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質変更のことをいいますが、この特定工作物とは下表の通りとなります。chouku1.png

 

 

 

ただし、原則があれば例外もあり、例えば農林漁業用建築物(温室、畜舎)の建設、農林漁業者の居住の用に供する建築物の建設については、そもそも開発許可を要しないとされ、コンビニ等の周辺地域の居住者の日常生活に必要な施設の建設、観光地のお土産売場等のように観光資源等の有効な利用上必要な施設の建設については、許可できるとされています。

 

③ 調整区域内における主な宅地の分類及び法的規制の違い

調整区域内における土地の評価では、対象地が農地なのか、宅地なのか、その中間に属する土地なのかによって大きく価格水準が異なりますが、もう一つの区分としては、宅地の中にも分類があり、その分類によって法的規制が異なるため、それぞれ価格水準に違いが発生します。

 

chouku2.png

   上記表は概略を記載したものです。対象地がどの宅地に分類されるかは、都市計画法に定めがあります。また、上記表には記載しておりませんが、旧・都市計画法4316号に既存宅地という制度があり、現在は原則廃止(平成13518日に廃止され、自己居住又は自己の業務の用に供する建物の建築を行う場合に限り、5年間の法律上の経過措置が存在した)されているものの各自治体によって取り扱いが異なるケースもあります。

都市計画法の改正によって、既存宅地制度は許可不要の制度から許可制へ移行したものと言え、例えば、調整区域内の林地であっても、条例により開発行為又は建築行為の許可が得られる可能性が有り、その場合、現況林地であっても宅地見込地としての評価を行う場合があります。したがって、調整区域内に存する土地の評価は、役所調査が重要な比重を占め、多様な取り扱いの中で複雑になってしまった感があります。 


 

Ⅱ 調整区域における主な論点

同じ調整区域でも、周辺都市の市街化の影響度等が異なったり、宅地か否か、宅地のうちどのような分類に属する土地か等によって価格水準が異なり、その状況に応じて様々な価格が形成されます。上記に示した宅地については、当該宅地がどのような分類に属するかを役所等への詳細な調査によって把握し、地域の宅地価格水準や当該宅地の個別的要因、市場流通性に及ぼす減価等を行うことにより評価することができます。

一般的に評価上よく論点となるのが、調整区域内の雑種地の評価です。現況が雑種地で、現在の地目が宅地の場合であっても、開発等の可能性については役所調査が重要になります。また、調査の結果、開発の可能性が無いことが確認された場合には、敷地利用が限定的となり、資材置場等にするケースが見られますが、最近の経済情勢の下では、資材置場を購入する需用者がほとんど存在しない(借地して利用するケースが多い)ため、大幅な減価が避けられない状況でもあります。

雑種地の評価の考え方については、本連載第7回のテーマであった「林地・雑種地」で述べさせて頂きました。要約すれば、調整区域内の雑種地(駐車場や資材置場等の敷地)では、周辺地域の土地利用動向と対象土地の個別的な条件による影響の判定が重要で、宅地利用の可能性に応じて評価方法は変わることとなります。よって、財産評価基準による表のように状況が類似する付近の土地価格に周辺の市街化の影響度によって減価率を乗じるという簡易な方法よりも、より個別的要因を反映させた鑑定評価は、対象土地の実態に即した評価を行うことができるという内容でした(詳細は本連載第7回御参照)。言い換えれば、調整区域は様々な個別的要因等によって価格水準が異なってくるため、財産評価基準による表を用いた簡易な方法では、実態に即した評価を行うことが困難であると言わざるを得ません。

その他、調整区域内の敷地評価では、①周囲が畑でその中に農業用施設が存している部分の敷地を評価する場合、②調整区域内の高圧線下の土地を評価する場合等が論点となっておりますが、この二つのケースについて解説してみたいと思います。

 

①   畑の中に農業用施設が存する場合の、当該施設の敷地

この場合、財産評価基本通達24-5は以下の通り定めております。

農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域(以下「農用地区域」という。)内又は市街化調整区域内に存する農業用施設(農業振興地域の整備に関する法律第3条第3号及び第4号に規定する施設をいう。)の用に供 されている宅地(以下本項において「農業用施設用地」という。)の価額は、その宅地が農地であるとした場合の1当たりの価額に、その農地を課税時期において当該農業用施設の用に供されている宅地とする場合に通常必要と認められる1当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り 又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を加算した金額に、その宅地の地積を乗じて計算した金額によって評価する。」とされています。式で表すと以下の通りとなります。

 

1㎡当たりの固定資産税評価額×畑の評価倍率+1㎡当たりの造成費=当該敷地㎡単価

 

これについては、不動産鑑定の場合、当該建物が建築基準法や農地法等に照らし合わせ遵法性を確保しているかの確認や、敷地についても周辺の開発の程度や地域の熟成度等も考慮して最有効使用を判定し、個別的要因を熟慮して評価額を算定します。

また、財産評価基本通達で評価する場合は造成費を加算するため、その造成費が高額に評価されて農業用施設の敷地が付近の宅地よりも高くなってしまうケースも見受けられたとのことです。特に山間部等では傾斜が多いため造成費が嵩み、評価額が高くなる傾向がある等の問題が生じております。

さらに言えば、土地登記簿の地目が宅地となっている農業用施設用地では、最近では見直し作業が進んでいるものの、宅地並に課税されているケースもあり、現況に即した評価が必要となっております。

 

②   調整区域内の高圧線下地の評価

高圧線等の電線路設置を目的として高圧送電線架設地役権がありますが、送電線の架設及び保守のために線下地が承役地になります。この地役権が付着した線下地については、工作物の設置、竹木の植栽を認めないケース、上空の一定の高さに送電線を通過させるため、支障にならならいように一定の高さ以上の工作物等の建築を制限するケースがあります。この場合、特に高さ制限をされても全く支障のない土地もあれば、調整区域内でも開発可能性を有する地域に存する土地には大きな影響を及ぼす等、そのケースによって与える影響は異なります。

 

a.農地の場合

下図は農地に高圧線が掛かり、線下地がある農地の例ですが、税務上の評価は現況の通り農地を前提とします。よって、一般的に農地の場合は地役権が設定されていても農作業には影響が無く、地役権による減価は無いとされます。ただし、地役権の内容によっては、農作業が出来ない場合もありますので、その内容によって、貸し付けられている農地(雑種地)として減価することができます。

chouku3.png

不動産鑑定士による鑑定評価の場合、最有効使用が農地としての利用であれば、特に結果は同じようになるものと考えられますが、同じ調整区域内の土地においても、上記で述べた通り様々な特性を有しておりますので、地域要因や個別的要因によっては評価額が異なるケースもございます。

例えば、上図の接面道路が繁華性のある路線商業地域であった場合、調整区域でも知事の許可を得ることによって沿道施設等の建設が可能な場合があります。このように開発可能性を有する土地については、土地の現況にもよりますが宅地並に評価される場合もあり、また、地役権が付着している場合の減価においても、その阻害の程度によっては大きな減価となる場合がございます。特にこのような土地について売買に係わる価格を決定する際には、不動産鑑定士による鑑定評価をとることが賢明だと考えます。

 

b.山林の場合

高圧線下地の減額を否認した判例があり、これは、山林が高圧線下にあることの影響は皆無とはいえないとしても、なおこれを斟酌すべき特段の理由があるとは認められないとしたものでした。よって、税務上、調整区域内の高圧線下の山林は、減価すべきではないとされております。

しかし、不動産鑑定士による鑑定評価の場合は農地の場合と同様に、最有効使用が山林であれば、高圧線下地による減価の可能性が少なく、山林の開発可能性や宅地化の可能性が認められる場合には、山林全体が宅地見込地程度の市場価格水準に評価される場合があるものの、高圧線下地における減価も、その阻害の程度によってより反映されることになります。 


 

~まとめ~

上記のように、調整区域内の農地、林地、宅地、雑種地は、それぞれ個別的に様々な価格形成が存在し、開発可能性や宅地として認められるか等、役所調査を綿密に行う必要があります。また、宅地(もしくは宅地見込地)として認められる土地においても、市場流通性に乏しい地域であれば、評価額はそれほど高い水準とはならないケースも多くなっており、評価時点における価格形成要因を見極めるには相応の市場分析、地域特性の分析、個別的要因の分析が不可欠になっております。

このように調整区域の土地の評価は、鑑定士による鑑定評価の中でも難易度が高いものとして認知されており、画一的な財産評価基準では、地域特性や個別不動産の特性を反映しきれず、実態に即した評価は困難となる場合も考えられます。したがって、調整区域内に存する土地の価格を調べる際には、役所調査やマーケットに精通した不動産鑑定士による鑑定評価を活用することをお勧めします。

 

 logo2.jpgのサムネール画像