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ケーススタディ・12 容積率を消化できない土地

 容積率が消化できないケースとは? 

 

容積率とは「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合」と定義されています。 

容積率は地域ごとに定められており、例えば第一種低層住居専用地域においては、50%60%80%100%150%200%のいずれかと定められております。これは指定容積率と呼ばれます。この指定容積率が個別の土地において消化できないケースは多々存在し、それには様々な理由が考えられます。

容積率が消化できないケースには、前面道路が狭い場合(12m未満の場合)、斜線制限、日影規制の影響を大きく受ける場合(東西に長い土地、複雑な地形(出入口が複数ある等)の土地、規模の小さな土地)などがあります。

そのほかにも、間口が狭い(路地状敷地など)ため条例等により建物の用途・規模に制限がかかる場合など、様々あります。また、物理的には消化可能であるにも関わらず、あえて利用していない場合(需要と供給の関係による)もあります。

 

~具体的ケース~

<前面道路が狭い場合(前面道路幅員による制限)

対象地の前面道路幅員が狭いことによって容積率が制限されるケースを紹介します。

前面道路幅員が12m未満の場合、建築基準法第52条第1項による制限を受けます。

具体的な例を用いて説明します。

 

≪ 図 (第一種低層住居専用地域:指定容積率200%) ≫

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上図のエリアにおける指定容積率は200%(第一種低層住居専用地域)です。従って、原則は200%の容積率を使用することが可能です。しかしながら前面道路幅員が12m未満の土地は原則通り、指定容積率を消化することができないケースがでてきます。

 

 

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   <斜線制限・日影規制の影響を大きく受けて容積未消化となるケース>

斜線制限(道路斜線制限、北側斜線制限、隣地斜線制限)や日影規制は建物の高さや敷地内における建物の位置の制約を生み、場合によっては指定容積率を消化しきれないケースが出てくることがあります。

 特に東西に長い土地(即ち南北に短い土地)は、建物が北側隣接地へ影を落としやすいことから日影規制の影響を受けやすく、日影規制をクリアするためには指定容積率を消化することが難しくなる場合があります。

 また、規模が小さな角地(接面道路は共に幅員がさほど広くない)の場合、両方の道路から道路斜線制限を受けるため、容積消化が難しくなる場合があります。鑑定評価においては、一方のみの街路に接する土地(中間画地)よりも、複数の街路に接する土地(角地、二方路、三方路)の方が利用効率、視認性等の面でプラスに働くことから鑑定評価額にもプラスに働くのが一般的です。しかしながらこのようなケースは角地であることがマイナスに働きます。但し、このケースでも天空率の制度ができたことによりこれを利用して解消されるケースもあります。但し建物が細く上に長くなることにより、構造上難しくなるケースもあります(特にコストとのバランスという問題が生じてきます)。

     ※天空率制度とは

  天空率制度とは、平成1511日より施行された改正建築基準法内において追加された制度で、従来の斜線勾配等による仕様規定から、天空率という新たな指標を用いて高さ制限の緩和が可能となる制度(性能規定)の併用が可能となりました。この制度に利用に際しては、従来の斜線制限が緩和されます。

  

<その他で考えられる容積率が消化できないケース>

その他で考えられる容積率が消化できないケースとしては、前記で例示した「間口が狭い(路地状敷地など)ため条例等により建物の用途・規模に制限がかかる場合」や、更にその他では、高低差がある・崖地である等の土地、区分地上権設定地、高圧線下地、余剰容積譲渡後の土地などが、容積が消化できないケースの例として考えられます。  

 


  

 

Ⅱ 容積率格差と価格格差の関係 

不動産業界には「一種幾ら」という概念があります。一種とは容積率100%のことであり、二種は200%です。○種と呼ぶのは以前、容積率400%の地域であれば「第四種容積地区」と呼ばれていた名残です。この概念は容積率の高低に応じて、比例的に土地価格が増減することを前提としています。 

更地の鑑定評価においては、対象不動産の最有効使用を想定(原則として基準容積率は可能な範囲でフルに消化することを想定)し、その最有効使用を前提とした価格を求めます。同じ土地上で容積率をフルに消化した場合の鑑定評価額と容積率が一部消化できない場合の鑑定評価額をそれぞれ求め、それぞれの鑑定評価額の差が認識されれば、その差は容積率の違いによる差であり、差額は容積率を消化できない土地の減価と認識することが可能です。

実際に鑑定評価を行うと、単純な比例関係では無かったり、用途や地域によっても容積率が消化できない土地の減価額や減価率は異なってくることが考えられます。以下、鑑定評価の立場で容積率格差がどのように価格格差として認識されるか具体的に見てみます。

 

<具体的な建物用途を想定した検討>

前記の例(前面道路が6m4mの例)に基づいて、具体的な建物用途を想定して検討を行ってみます。建物用途は共同住宅を想定します。

 

[収益アプローチ] 

実際の鑑定評価においては収益還元法という手法を用いて、具体的な収支想定を行います。ここでは簡易的に収益性の相違を分析します。

  前記の例では、容積対象床面積に200㎡の差が生じています。仮に「容積対象床面積=賃貸可能面積」とすると(現実には容積対象床面積>賃貸可能面積のケースが多いですが)1戸あたり70㎡弱のファミリータイプ3戸分の差が生じます。前面道路が6mあれば、4mの場合より70㎡弱の住戸を3戸多く賃貸できるということになります。1戸あたり月額15万円の家賃を想定すると、3戸で45万円/月、年間では540万円の収入が得られることになります。

当然に3戸分(200㎡分)の追加建築費(追加イニシャルコスト)も発生しますし、完成後の管理費等も多くかかります(追加ランニングコストの発生)。それでも200㎡多く賃貸する方が収支に対してプラスに影響するならば、前面道路が6mで容積率が200%の評価額は、前面道路が4mで基準容積率が160%の評価額より高くなります。なお商業地(オフィス想定)の場合には、想定される家賃収入が共同住宅より高いケースが多いため、基本的には家賃の格差(収益格差)が大きくなり、評価額の格差も大きくなることが予想されます。

  

[開発アプローチ] 

実際の鑑定評価においては開発法という手法を用いて、具体的な開発想定(分譲想定)を行います。ここでは簡易的に事業採算性の相違を分析します。

収益アプローチとは異なり、開発アプローチでは分譲マンション開発を想定します。収益アプローチと同じく1戸あたり70㎡弱のファミリータイプで考えると3戸分の差が生じます。前面道路が6mあれば、4mの場合より70㎡弱の住戸を3戸多く分譲できるということになります。

1戸あたり3,000万円の分譲価格を想定すると、3戸で9,000万円の収入が得られることになります。

当然に3戸分(200㎡分)の追加建築費も発生しますし、販売経費等も多くかかります。販売期間も延びることになります。それでも200㎡多く分譲する方が収支に対してプラスに影響するならば、前面道路が6mで容積率が200%の評価額は、前面道路が4mで基準容積率が160%の評価額より高くなります。

 

<土地価格比準表で見る容積率格差と価格格差(高度商業地域の場合) 

高度商業地域は最も容積率が高いエリアと言えます(700%1000%) 

更に当該地域は地価が相対的に高いため、容積率格差が価格に与える影響も大きくなります。

これまでのケーススタディでも何度か紹介のありました「土地価格比準表」(国土交通省 土地・水資源局 地価調査課 監修、地価調査研究会 編著)を見ると、高度商業地域における「容積制限による規制」に係る格差は下記の通りとなっています。 

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上記の表から、基準地域が劣る地域である一方、対象地域が優る地域である場合には、32.5ポイントの格差が付くことになります。両地域の容積率格差が300%であるとすれば、容積率100%あたり10ポイント超の格差です。容積率が価格に与える影響の高いことが良く分かります。 


 

 ~まとめ~

 

容積率を消化できない土地と消化できる土地とでは、想定建物の収支条件等が異なってくることから、価格にも差が生じることがご理解頂けたかと思います。更に、単純に容積率格差○%あたり○ポイントなどと考えるだけでは足りず、複合的に影響する部分まで考慮が必要であり、例えば接面道路との関係との相乗的な影響も考慮する必要があることもご理解頂けたかと思います。

また一方で、物理的に容積率が消化できる土地であっても、フルに消化しても比例的に収益や効用が上がらないために周辺一帯が低い容積率の使用にとどまっているような地域もあります。そのような地域では、使用可能容積率を基準にするのではなく、その地域における標準的な使用容積率等の観察・考慮が必要となります。この場合には容積率を消化している土地の価格が、消化していない(できない)土地よりも価値が高いとは単純に言い切れません。

 

結局は、容積率の消化状況、未消化であればその理由(消化できないのか、あえて消化していないのか)などを総合的・多角的に分析・判断し、あらゆる価格形成要因を考慮の上、妥当な価格を導き出すことが必要と言えます。それは不動産鑑定士の専門領域と言えます。

 このようなことから、客観的な意見を得るために、専門家である不動産鑑定士にご相談され、有効であると判断できる場合には、不動産鑑定士よる鑑定評価をご活用されることをお勧めいたします。

 

 

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