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ケーススタディ・13 土壌汚染・埋蔵文化財のある土地

 土壌汚染とは? 

 

土壌汚染という言葉をご存知でしょうか。

最近では築地市場の移転先である東京都江東区の豊洲の予定地に重大な土壌汚染が見つかり、膨大な対策費用がかかることから、購入者である東京都、売主である民間企業がこの費用の負担をめぐって大きな問題となっています。この他、マンションの敷地に汚染があることが分かっていながらこれを分譲した大手不動産会社に購入者が多額の損害賠償と対策費を請求した大阪のケースや、長野県では工場用地の敷地の取引をめぐって、買主の企業が売主に対して自ら実施した対策費相当額の賠償請求をめぐる裁判で、買主側の主張がほぼ認められたケースなどが報道され、土壌汚染は土地の取引や評価において重要な調査項目として関心が高まっています。

 

では、土壌汚染とは何でしょうか。

土壌汚染とは有害物質により土壌が汚染されることです。土壌汚染に関する法律というとまずは土壌汚染対策法が挙げられます。これは有害物質の利用履歴のある土地の所有者に対して、行政が汚染の有無とその程度の調査とこれを除去する措置等を土地の所有者に命令できる法律です。この法律で規定される有害物質とは大きく3つに分類され、全体で26項目の化学物質があり、これらを特定有害物質と呼びます。dojou1.jpg

 

  また、このほかにも、別の法律で規定されている「ダイオキシン」などの有害物質ありますこうした物質に直接触れたり、あるいは地下水を介して摂取することで健康被害が発生する危険があります。

従って、土地の所有者は自分の所有する土地から汚染が第三者の健康を害しないように適切な対策を取る必要があります。売買の際には売主としての瑕疵担保責任がありますので、売却の際には土壌汚染の有無について買主に説明する必要がありますし、もし土壌汚染があることを知らずに売ったとしても後から契約の解除や損害賠償を求められことになります。 

 

こうした汚染物質の存在はどの様に把握すればいいのでしょうか。実際にご自分がお持ちの土地に汚染物質があるのかないのか、また、どんな物質がどの程度存在するのかについては、地中の話ですからなかなか分かりません。

そこで、専門の調査会社に依頼することが必要となります。土壌汚染が通常見つかるのはかつて工場であったとか、産業廃棄物の処理場であったといった土地の利用履歴のある場合が多いようです。

したがって土地の履歴を調べることでだいたいの状況は予見できます。具体的には過去に遡って古い住宅地図を入手するとか、役所などで有害物質の使用の届出状況を確認するなどで、ある程度の予想は可能です。不動産の鑑定評価においても我々不動産鑑定士はこうした調査を行っています。こうした地歴の調査をフェーズⅠといいます。

ただし、まったく疑わしい使用履歴がなくても建設廃材が地中に埋められているケースもあります。この他、隣接地から地下水の流れに乗って汚染物質が染み出ていたケース(もらい汚染といいます)もありますので、周辺の使用履歴も調査が必要です。通常はこうした調査で問題がなければ調査会社から汚染の可能性は低いといった調査報告書が得られますが、疑わしい履歴がある場合には実際にサンプル調査を実施しなければなりません。これをフェーズⅡといいます。

フェーズⅡは実際に土地を掘って調査するものですが、汚染物質に応じてそれぞれ調査方法が違いますので、適切な調査方法を選択することが必要です。これで、汚染がないことが分かれば概ね汚染の可能性が低いと判断できます。ただし、土地はいつも更地の状態とは限りませんので、建物がある場合には、建物の下はフェーズⅡを実施できません。

 

こうした調査の結果、ある程度汚染物質の状況が判明してくると、これを除去するための対策工事が必要になります。対策工事には、有害物質により原位置で分解、中和させたり、吸引や揮発させる方法、固化や封じ込めにより拡散を防ぐ方法、あるいは掘削して外部の処理場等に持ち込む方法などがあります。いずれにせよ有害物質の種類や位置、量などを特定する必要があります。

  

この様に土壌汚染の存在が疑わしい土地を所有している人にとってはこうした調査費用と対策費用の負担が生じるわけです。また、調査や対策工事に要する時間も考慮する必要があり、これらは土地の価格に対する減価として認識されます。さらに減価ということで言えば、いったん土地に汚染があることが分かると、場合によっては周辺の住民に対して説明をする必要がありますし、隣接地へ汚染が漏れ出していないか追加調査を求められるなど費用が増えてゆく可能性があります。さらに風評でその土地は汚染地である、あるいはあったとして適切な対策を実施した後も土地の価格が元に戻らないといった事もあるようです。

  

〔国税庁による評価の考え方〕

平成16年7月5日付国税庁課税部資産評価企画官情報第3号・国税庁課税部資産課税課情報第13号によれば土壌汚染地の評価の考え方について以下のように記載されています。dojou2.jpg

 

 この考え方は不動産鑑定における土壌汚染地の評価の考え方と基本的には同じですが、以下補足説明を付け加えます。

 

  1. 土壌汚染地として評価するに当たっては「課税時期において評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地」であるとされます。従って、可能性があるという程度では汚染地としての減価は考慮されません。この点は鑑定評価でも、汚染の有無を可能性のレベルでは判定しませんので、地歴に疑いがある場合にはフェーズⅡ(サンプル調査)を行います。つまり調査の上、汚染があることを証明しないと汚染はないものとして評価されてしまう可能性があると考えられます。
  2. 浄化・改善費用については相続税路線価が地価公示価格レベルの80%相当額であることから浄化・改善費用もその見積額の80%が相当とされます。相続税路線価は必ずしも実勢価格より低いとは限りませんので、この場合、土地の評価は高めに行われ、控除される浄化・改善費用は低めに押さえられてしまう可能性があります。
  3. 使用収益の制限による減価とは汚染物質を完全には浄化除去しなくても、外部への拡散や、人体への影響のないような対策(封じ込めなどといいます)をするほうが、コストの点からも合理的である場合に、たとえば建物の敷地としての使用は難しいが、駐車場や資材置き場としては使用できるような場合に、この使用方法の違いによる実質的な減価を言います。
  4.  心理的要因による減価とはたとえ浄化・改善が実施されても心理的な嫌悪感などにより市場で十分な評価を得られないことによる減価です。

この様に財産評価基準などでも土壌汚染地に関しては減価することは認められています。従って、汚染の有無とその状況を的確に調査して、その土地の性質に応じた適切な対策方法を選別し、対策費用を的確に把握することが大切になります。

 

この他にも土地だけでなく、建物に関する有害物質としての減価要因がありますので、追加でご説明します。アスベストが発ガン物質として人体へ甚大な健康被害を及ぼすことが最近大きな問題になっています。日本ではかつて耐火被膜として建物の鉄骨などの吹付け材として利用されてきましたが1975年に使用が禁止されています。その後、さらに環境基準が厳しくなり、新たに規制の対象となる物質などが加えられて現在に至ります。

 

こうした材料を使用している建物はまだ多く残されており、建物の所有者は定期的な調査や除去工事など多くの負担が求められます。除去工事や建物自体の解体工事の場合には厳重に飛散防止の養生が必要となるなど、周辺住人や工事施工者への適切な配慮が必要で相応の工事金額が必要です。相続税の評価は固定資産税の評価額と同一ですがこうした個別性は一般的には考慮されません。

建物の評価においても土壌汚染の場合と同じように除去費用などを適切に把握することが建物の評価には必要でしょう。

 


Ⅱ 埋蔵文化財とは? 

 

埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている文化財(主に遺跡や遺物)のことです。

文化財は国の財産として文化財保護制度の下、文化財保護法によりその保護が図られていますが、そのためには所有者の調査費用の負担や開発行為の停止などを求められることがあります。土地にある程度高層の建物を建築しようとすれば地中に杭を打ったり、地下室を設置したりします。そのときに地中の文化財を破損することになるので、こうした場合にはまず地中に埋蔵文化財が存在するか否かを試掘調査によって判定し、文化財が存在する場合にはこれを発掘、記録することになります。

 

埋蔵文化財は歴史のある古い街や河川の流域などでかつて集落が存在していた場所などでは頻繁に出土します。文化財保護法ではこうした埋蔵文化財の存在する地域について「周知の埋蔵文化財包蔵地」としてその存在の周知を国や地方公共団体に求めています。

この周知の埋蔵文化財包蔵地は全国で約44万カ所あり、毎年8千件以上の発掘調査が行われているそうです。

「周知の埋蔵文化財包蔵地」は県や市の教育委員会などで確認ができます。当該地において土木工事などの開発行為を行う場合には事前に届出が必要で、さらに必要に応じて試掘調査などが求められる場合があります。その後、重要な文化財の存在が分かればこれを保護するための措置が必要になり、発掘調査の範囲や計画の変更などについて開発者と行政側で協議が行われます。近畿圏など歴史の古い地域では、地層ごとに異なる遺跡が存在する場合があり、何重にも包蔵地が折り重なっているところもあるようです。従って工事の範囲(広さや深さ)なども行政との協議においては重要な事項で、これはどんな建物を計画しているか、あるいはその土地の利用方法として何が有効であるかということにも関わってきます。

 

埋蔵文化財包蔵地の評価は前記の土壌汚染のある土地の評価と比較的似ています。従って鑑定評価では埋蔵文化財がないものとした土地の評価額から、調査発掘に関する費用や時間を考慮して評価額を求めます。ただし、埋蔵文化財の場合は、発掘後の心理的な要因による減価は認められませんので、これは考慮しません。また、埋蔵文化財包蔵地に含まれるといっても必ずしも文化財が出土するとは限りません。そこで、周辺地での調査状況、出土の有無、その分布状況などからその可能性を判断します。

 

財産評価基準では埋蔵文化財が存する土地の評価に関する記載がありません。

判例では埋蔵文化財包蔵地内の土地の評価について、発掘費用相当額を減価すべきか否かについて争われた事案があります。この時の行政側の主張は調査発掘費用は必ずしも負担することが決められているものではないので控除する必要はないというものでしたが、結論としては文化財が過去の調査等から確実にあると判断される箇所について、必要な発掘調査費用相当額の80%が評価減として認められています。

この場合もまずは埋蔵文化財がないものとした土地の評価を路線価で行っていますので公示価格の80%を評価額として査定していることから費用も80%で査定されています。

一方、鑑定評価の場合ですと、まず土地の評価額は取引事例比較法や開発法などでその個別性を的確に反映した手法に基づいて行います。こうした手法の方が土地の個別性を十分に反映させた評価額を把握できます。また、調査発掘費用も周辺の出土状況などを勘案し、さらに想定される有効な建物に合わせた的確な費用と期間を織り込んで査定することが可能です。 

 


 

 ~まとめ~

 

土壌汚染のある土地も埋蔵文化財のある土地も鑑定評価を行うにあたってはまずはその土地が本来どれほどの価値があるのかを的確に判定することから始めます。これまでの各鑑定士のご説明などで、土地の形状や道路付けの状況など、様々や要因により評価額が大きく変わる可能性があることをお分かりいただけたと思います。それぞれの土地が持つ個別性に着目し、まずは的確な土地の価値を判定します。次に土壌汚染や埋蔵文化財の有無とその程度をその他の専門家との連携により把握し、その対策費用を見積もります。そのためには土地の個別性に基づいてどのような利用方法が最も有効なのかという判断も必要になります。

 

そして例えば土壌汚染なら心理的な影響の程度のほか、対策工事期間、埋蔵文化財なら調査・発掘期間などが評価に与える影響なども総合的に勘案して、先の専門家の意見を取りまとめ最終的に鑑定評価額として結論を導き出すのが不動産鑑定士の役割です。

このようなことから、客観的な意見を得るために、専門家である不動産鑑定士にご相談され、有効であると判断できる場合には、不動産鑑定士よる鑑定評価をご活用されることをお勧めいたします。

 

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