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ケーススタディ・2 面積が大きい土地(広大地)

 不動産の市況の善し悪しや立地条件に大きく左右されますが、一般的に面積の大きな土地は、その地域の標準的な規模の土地に比べて土地の単価は低くなる傾向が見られます(面大減価)。これは、規模の大きな土地は、総額が大きくなったり、多くの市場参加者が必要とする土地面積を大きく超えていて無駄な部分が発生したり、また有効に活用しようとすれば開発行為に該当し開発許可を要したりするため、需要者がかなり限定されてしまうことなどを要因としていると考えられます。

 とはいえ、都会の中心商業地では規模の大きな土地は滅多に市場に出回らないため、高値で取引されたり、マンション業者等が多く競合する物件では周辺の相場よりも割高で取引されたりするケースも見られます。

 そのため、面積が大きいことをもって直ちに土地の単価が低くなるとは即断できませんが、一定の条件下では多くの場合、土地の単価が低くなる傾向にあります。その土地の単価が低くなる程度も、大きなものでは標準的な土地の価格の1/3程度にまで低下するケースもあります。

 

Ⅰ 財産評価基本通達による評価 

1      平成16年の改正前

 相続税等のための財産評価基本通達(いわゆる路線価評価のことです)では、従来、面積の大きな土地を「広大地」とし、これを以下の算式で求められた数値を使って減価していました。

相続2-1.JPG

 これは、面積の大きな土地(広大地)の場合、開発許可を受ける際に敷地内に道路や緑地、ゴミ置場等を設置することが必要となりますので、その部分を除いた建物が建てられる有効部分(有効宅地という)の比率(有効宅地化率)で、減価率を算定するということです。この算定方式に基づけば、土地の形状や道路との接面状況によってかなり幅は生じますが、600㎡程度の土地であれば約20%程度の減価(路線価の80%水準の評価となる)1,200㎡程度の土地では2530%程度の減価(7075%水準)となるケースが一般的でした。

 しかし、実際には有力な需要者として想定できる開発業者は、公共公益的施設用地の他にも造成費や販売管理費等を負担することになるため、この程度の減価率では不十分なケースが多く、不動産鑑定士による鑑定評価を行ない、財産評価基本通達に基づく評価よりも低い鑑定評価額で申告等をするケースもかなりあったと言えます。

 

2      現行の広大地評価通達規定の概要

 前記の通り、不動産鑑定士による鑑定評価額に基づく申告等が多かったこともあって、平成16年に財産評価基本通達の広大地評価に関する規定が大きく改正されました。以下に通達を引用します(読みやすくするため、一部省略)

相続2-2.JPG

この改正は、申告や更正の請求に用いられた鑑定評価事例を検討した結果が反映されたものと言えます。

 すなわち、路線価地域について規定している(1)の新たな算式が改正の目玉となるものです。この算式は、従来無視されていた開発業者の負担する諸費用(造成費、販売管理費、借入金利息等)、事業リスク、適正利益を考慮した補正率を採用するとしたものです。この結果、面積が600㎡の土地は、広大地補正率57%(43%の減価率)1,200㎡の土地で54%(46%の減価率)と改正以前と比べて減価率が大きくなりました。但し、上記の規定は5,000㎡以下の地積のものを対象としており、広大地補正率は0.35が下限になります。

 この改正の結果、従来よりも減価率が大きくなり、不動産の取引実態に近づいたと言えるでしょう。しかし、この規定の適用にあたっては、依然として課題は残っています。

 

Ⅱ 現行の財産評価基本通達の問題点 

1      その他の補正率の不適用

前記の通り、現行規定では「15(奥行価格補正)から20-5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めに代わるものとして」という文言があり、広大地は通常適用される「奥行価格補正」「不整形地」「無道路地」「間口が狭小な宅地等」「がけ地等を有する宅地」「容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地」という項目は適用できないことになります。またその他「セットバックを必要とする宅地」も「資産評価企画官情報」において適用除外の項目となっています。

しかし、これらの項目はいずれも土地の個別性に係わる項目であり、これらが一律に適用できないと、評価の正確性に欠くと言わざるを得ない結果となります。特に適用できないとされる要因がその土地の利用効率に大きく影響している場合には、財産評価基本通達による評価と不動産鑑定士による鑑定評価額とは大きな乖離が生じると考えられます。

 

2      広大地に該当するか否か

前記の規定では、大規模工業用地とマンション適地を除外するとされていますが、そもそも広大地とはどういう土地であるのかということは、「資産評価企画官情報」という文書において、具体的に解説しています。

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 また面積基準として、市街化区域内は、三大都市圏では500㎡、それ以外の地域では1,000㎡、非線引都市計画区域では3,000(但し、用途地域が定められている場合は市街化区域に準ずる)と明確にしています。

ただ、面積基準をクリアしたとしても、最も判断に困る問題が「マンション適地」かどうかということでしょう。「資産評価企画官情報」では、「その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることになる」としていますが、戸建住宅とマンション等が混在する地域(主に容積率200%の地域)は、周囲の状況や専門家の意見から判断して、明らかにマンション等の敷地に適していると認められる土地を除き、広大地に該当するとしています。明らかに「マンション適地」と言えなければ、広大地に該当することになりますので、広大地に該当する範囲はかなり広く考えてもよいことになります。

 

以上のように、現行規定はかなり不動産市場の実態を考慮した規定であると言えますが、それでもいくつかの問題を指摘することができます。

 

①面積基準をわずかに下回る場合

仮に三大都市圏の市街化区域で、500㎡をわずかに下回り、広大地評価の適用ができない土地は、通常の土地と同様、奥行価格補正等を適用して減価等を行なうことになりますが、500㎡であれば広大地となり57.5%として評価される(減価率42.5%)のに対して、広大地ではない場合は大きくても1015%の減価率にしかならないことが多いです。この差は極めて大きいと言わざるを得ません。

 

②開発許可が受けられない土地・無道路地

接面道路が狭いとかあるいは無道路地である場合はどう考えるべきでしょう。これらは、広大地の有効利用の形態である開発行為自体が行なえない土地であり、開発行為が行ないうる土地に比べても著しく減価が生じていると言わざるを得ません。財産評価基本通達には無道路地の場合、最大40%の減価ができるという規定がありますが、広大地ととらえるとこの規定は適用できません。しかし、無道路地の広大地は、無道路地として減価が発生し、またこれとは別に広大地としての減価も発生しています。これらの土地の評価は、現行規定においても十分とは言い難いと考えられます。

 

③周辺に賃貸マンションが多い土地

「マンション適地」かどうかを判定するにあたって、周辺に賃貸マンションが多い地域ではどう判断すべきかも迷うところと思われます。一般に郊外における賃貸マンションは、土地所有者が所有する土地の有効活用や相続税対策として建設する場合が多く見られます。これらは、もともと所有している土地があって、そこに建物だけを新築するため、ようやく事業として成り立つケースが大半です。このような地域にある広大地を「マンション適地」ととらえるべきかは問題があると言えます。

 

④容積率300%以上の土地

前記の通り、容積率が300%以上の土地は原則として広大地に該当しないとされています。これは容積率が高い地域では高度利用が可能であるため、戸建分譲開発よりもマンション等の敷地として一体利用されることが経済合理性に適うため、「マンション適地」ととらえていることによります。確かに一般的にはそのように言えますが、地方都市等では少々事情が異なります。そのため、地方圏等では容積率基準が300%以上から500%以上に引き上げられていますが、必ずしも高度利用することが経済合理性に適っていないエリアは、地方都市等では散見されます。これらの地域では、本当に高度利用することが合理的かどうかを見極める必要があります。

 

Ⅲ 不動産鑑定士による鑑定評価を活用する場面

 以上、財産評価基本通達における広大地の評価方法を見てきましたが、不動産市場の実態に近づいた評価方法に変更されてきていますので、広大地の評価が適用できるケースではまずはこれで試算してみることです。しかし、以下のようなケースでは積極的に不動産鑑定士による鑑定評価を活用されることをお薦めします。

 

①「マンション適地」かどうか判断に迷う場合

財産評価基本通達では、広大地の評価については、不動産鑑定評価における「最有効使用」の概念を基準にしています。そのため、当該土地の最有効使用が分譲マンションであるのか、戸建住宅として開発分譲することかを判定することは極めて重要なステップです。そのため、判断に迷う際には、この最有効使用の判定を日常的に行なっている不動産鑑定士による鑑定評価を活用することが有効です。

 

②面積基準を充たさない等、広大地に該当しない土地の場合

面積基準を充たさないケースでも、標準的規模の土地に比べて大きい場合は、程度の差はあれ多くの場合で「面大減価」が発生しています。広大地に該当しない場合には、財産評価基本通達に基づく評価では、それほど大きな減価とはならないため、不動産鑑定士による鑑定評価を活用することが有効です。

 

③特殊な要因を有する土地の場合

広大地に該当する場合、奥行価格補正等、その他の補正が適用除外となるため、必ずしも当該土地の価格を正確に評価できない場合があります。長方形の均整のとれた土地ではなく、土地の有効利用に影響する要因を抱えている土地の場合は、不動産鑑定士による鑑定評価を活用することが有効です。 

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