環境問題の重要性、とりわけ不動産・建設業界における取り組みの必要性が叫ばれて久しく、行政、民間を問わず様々な取り組みがなされています。中でも我々不動産鑑定士と関わりが大きい「環境と不動産価値」については、(社)日本不動産鑑定協会の「環境付加価値ワーキンググループ」や国土交通省の「環境の価値を重視した不動産市場のあり方研究会」などで研究報告が取りまとめられており、サステナブル建築(※1)普及の可能性や環境時代における不動産評価の在り方について一定の示唆を与えるものと言えます。しかしながら国内においてサステナブル建築は、オーナー、テナント、投資家など不動産を取り巻く各ステークホルダーから十分に評価されているとは言い難く、上記研究報告でも指摘の通り、環境付加価値を含む各種情報整備の遅れなど課題も多いのが現状です。一方、米国などに目を向けると、サステナブル建築とそうでないものとを比較した場合に、賃料、利回り等投資パフォーマンスの面で前者に優位性があるとの調査結果があるなど、不動産市場において一定の評価を受けています。米国でおきたことが日本に数年のタイムラグを伴い生じるというこれまでの経済法則に従えば、遅かれ早かれサステナブル建築が市民権を得る期待値は高いと言えます。とは言え、不動産市況そのものが盛り上がりに欠ける中、その時期がいつになるのか予測しづらい状況ではありますが、少なくとも2010年4月の東京都環境確保条例の改正で、大規模事業所に対する温室効果ガス排出の総量削減義務化と排出量取引の制度化がその時期を早めたことは間違いないと考えています。以上のような問題意識を背景として当社では、2008年に「環境と不動産評価」研究グループを立ち上げ、来たるべきサステナブル建築時代に向け様々な取り組みを行っています。
※1 サステナブル建築とは建設時の省資源化、耐久性の向上、運用時のエネルギー消費量削減などにより、環境負荷低減に配慮した建築物のことで、ここでいう「環境」とは、自然環境のほか、執務・居住環境、地域の景観など、地球レベルのものからより身近なものまで幅広いものを包含するものと捉えられています。