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CASBEE不動産マーケット普及版は道半ば?

日本ヴァリュアーズ東京本社の河合です。

 

先日、CASBEE不動産マーケット普及版」(以下、不動産普及版)の評価制度開始説明会に行ってきました。

 

ヴァリュアーズの皆さん、CASBEE覚えてますね?以前から社内レクチュアしてきましたが、地球温暖化が深刻に叫ばれ始めた10年ほど前から、じわじわと全国に広まった(はずの)、建築物環境対応評価システムです。  

 

米国のLEEDや英国のBREEMと並ぶ日本独自のシステムで、当初は大層期待されていたのですが、現   在のところ、どうも一般国民レベルでの認知度は上がっていません。

原因の一つに、建物建設時の評価はともかく、建設後の売買や賃貸、リニューアルなどに関わる膨大な不動産市場での浸透が見込めなかったことがあります。不動産マーケットでの判断スピードにそぐわない、という点です。というか、大体が建築技術者による専門的な技術・設備仕様のチェックであるため、時間がかかるのは当たり前です。資産性との関連性も重視していなかったため、不動産関係者が関心を示さなかったのも無理はありません。

 

しかし国側としては、もっとスピーディに、もっと簡単にできる環境対応評価システムにせにゃ前に進めん、と遅ればせながら気づいたのでしょうか、昨年あたりから需要が拡大してきた一部金融機関の環境認証を追いかけるように?一気にこの不動産普及版が開発され、1年間の暫定試行を経て、今回の制度開始のアナウンスに至ったわけです。

 

不動産普及版は従来のCASBEE(以下、従来版)と比べて、

1)項目が少なくて評価が容易、

2)評価・認証にかかる時間が短い、

3)認証費用が安い、

4)海外でも通用するように評価項目を共通化

といった特徴がありますが、今回の普及版は、一言で言えば、世界中で使われているLEEDの知名度、グローバル度の軍門に下って開発されたような印象です。

 

実際の認証制度は、半年後(平成25年4月1日)からスタートするのですが、認知啓蒙のため、来月の5日から「先行」認証が開始されます。オフィスビル限定で、規模を問わず1物件7万円という安さ!です(正式な認証費用は、評価機関や建物規模によって変わりますが、概ね10万円~20万円程度になるようです)。

 

またこの認証のために、評価員や評価機関が必要になりますが、何せ半年後に間に合わせるため、誰でも試験を受けられるようになっています。一級建築士に限られていた従来版の受験資格に比べれば、関係者への敷居は大いに低くなったといえます。こうしたうまい話を含んだ動き方には、国の焦りも透けて見えますが、興味のある皆さんは、一つトライして名刺の肩書きを増やしてみてはいかがですか。

 

さて。ここからが本題。

不動産普及版を作成した(財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)は、暫定試行期間中に()日本ビルヂング協会の協力を仰ぎ、会員大手10社が都内に所有する計72のビルについて、同システムで評価し、従来版との相関性などを調べるフィジビリティスタディを行っています。ただしこれらは、ほとんどが延床面積1万㎡以上の大規模なもので、5千㎡以下の中小ビルは含まれていません。

 

その結果の一部は、以下のいくつかの表に示した通りです。従来版との相関性は、ある程度見られることが明らかになりました。これは関係者の予想通りで、制度の相互流用性や整合性に問題はないと言えます。

 casbee1.png

しかし意外な結果も別に出たのです。不動産普及版による格付けと、規模や築年との相関性は、明確には浮かび上がってこなかったのです。

2000年以降に竣工した大規模オフィスビルは、全てAまたはSクラスで評価ポイントも高いのですが、1970年以前に竣工した古いビルでもほとんどがAクラスだったのです。

また延床面積が10万㎡を超えるような規模になると、評価ポイントが下がり始めるという結果も得られました。

casbee2.png

casbee3.png

建築経過年数が数十年のビルでも改修によって性能を維持し、AB+の評価を受けている(資料:IBEC

 

前者の大きな理由は、維持管理や設備の更新を適切に行っていたためです。ある規模以上のビルならば、当然維持管理はしっかりやらざるを得ないはずなので、古い大規模ビルの所有者には、適切な管理がビルの価値低下を防いだことを確認できて朗報となりました。問題は、このスタディの対象から外れている中小規模のビルの方で、全国で見れば圧倒的に大きい件数と面積ですから、重い結果が想像されます。

後者の理由は、大規模になればなるほど、複合用途化(店舗、ホール、ホテルなど)されるのが当たり前であり、オフィスだけに限定した評価システムでは、竣工年にかかわらず過小評価されやすい、と分析されました。

 

この他、ビル所有者側による主観評価順位と、この不動産普及版による評価順位との相関性もあまり強くはないという結果も出ていますす。

 

 

私は単純に「?」と思いました。これって、この評価システムがまだ実態に即しておらず、精度も低く、改善の余地大ということでしょうと。第一、大規模であればあるほど複合性や構成が異なりやすいのだから、一律の「事務所ビル仕様」フィルターを掛けること自体に無理がありそうです。

なのに「誰でも出来る簡単評価、しかも安いでっせ!」なんてふれこみでとりあえずスタートするなんて、「危ういんじゃないの」を通り越して、な〜んか他の目的があるのかな、と勘ぐりたくなってしまいます。

 

私は、普及版そのものを疑うつもりはないし、それなりに環境対応の宣伝効果を果たしつつ、今後の不動産市場(建設市場ではありません)に少なからぬ影響を与えていくはず、と確信はしています。しかし、なぜもっと腰の据わった制度にできないのだろうかとも思います。とりあえず世の中に投げて賛否の程度を見極めながら「見直しを図っていく」という方法には、住宅性能表示制度や省エネルギー法などでいやというほど肩すかしを食らわされてきたので、また同じことか、という気になってしまいます。少なくとも建設業界では現場が混乱するでしょう。そうなれば建主の利益にもつながりません。ましてや昨今のように1〜2年で見直しが連発されると、制度そのものへの不信感が生まれ、アネハ事件のようなことが繰り返される可能性が高くなります。

 

建築関係者の一人として私は、LEEDに合わせようが合わせまいが、実はあまり関心がありません。ただ日本での環境不動産評価は、まだまだあまり大きな動きになりにくい状況なので、せっかく新たなシステムを作るのなら、せめて一緒に他の行政支援策、例えば容積率の割増インセンティブとか補助金、税の優遇とか、連動施策を敷いて具体的な不動産流通メリットがイメージできた上で投入してもらいたかった。

 

と、ここでハッと、先月公布・施行されたされたばかりの法令を思い出しました。「建物内に備蓄倉庫や蓄電池、自家発電機や貯水槽を設ける部分の面積は、一定の範囲内で延べ面積に算入しない」というものです。皆さんご存知の駐車場面積5分の1緩和ルールと同じ並び、建築基準法施行令第2条が改正されていたんです!そうだったのか池上さん!早く言ってよ眼鏡市場さん!まあこの程度でも、広く強く知らしめれば、それなりに耳目を集める効果はあるはずです。何で一緒に、効果的な公表をしないの!?

 

ただし皆さん、一方で、国交省はつい数日前に、省エネ法と低炭素化促進法に関わる新基準値などの改正予定も公表しました。省エネ新基準の施行は来年の4月1日、低炭素化促進法による基準値は、遅くとも今年の12月4日には施行されます。そうなれば(特に住宅での)品確法や長期優良住宅認定制度からCASBEEに至るまで、その計算方法や内容の見直しは必至です。整合性取ってよ、国交省さん!

 

こんなことを考えながら聞いた説明会でしたが、これが満員御礼だったんですねえ。申込定員を遥かに上回ったため急遽会場を変更したぐらいの盛況です。いよいよ不動産業界でも環境対応の風が吹いてきたか、と思いました。ただ年配者が多かったこと、説明が始まると同時に舟漕ぎを始めるのは若者に多かった様子などを見ると、まだ先は長いなあとも。

 

私は従来版の建築評価員なので、講習を受け、登録料を支払えば不動産普及版の評価員になれます。仕事のいろいろな面で強みを持てるでしょう。

持てるでしょうが、以上のことごとから、天下りの方々(もうほとんど私も同世代)の退職金稼ぎに加担するような真似をしたくもなく…どうしようか…夕暮れの雲を見つつ迷っているところなのであります(ここら辺の迷いが仕事取れない原因なんだろうなあ)。

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