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おもはらの森

日本ヴァリュアーズ東京本社の河合です。

 

前回、東京・表参道の「東急プラザ」ビル(おもはらビル)について少し書きましたが、今回はその捕捉編。主に設計の視点から。

 

kawai1.png報道やオープンにされている図面などで、大体のイメージは持っていました。建築設計を職にしている以上、現物を見なくても、おおよそのイメージは正確に捉える事はできると自負しているので、行く前は「まあこのくらいでは」と、半ばタカを括っていました。

場所が場所だけにどんなデザインと構成であっても、まず商業面での外れはないだろう事、従ってどれだけ話題性のある外観が造れるかにかかっていたであろう事、しかし結構鈍重かつベタッとしたイメージしか持てず、こんなんで良いの?と思っていたことなど。

特に一番の「売り」と目される屋上の「おもはらの森」は、一般的な屋上緑化に毛の生えた程度のプアなイメージしかありませんでした。

 

ところが。

現物を見た結果は、上記の半分以上が的外れ!kawai2.png

これだけ事前のイメージとずれたのも珍しく、自分の「見る力」が劣化してきたかと少し焦ったほどです。原因ははっきりしてます。やや専門的な感覚ですが、図面などで想像していたスケール感が違うのです。想像していた以上に大きい!

 

この前提が崩れると、他のイメージも総崩れ。内部の広さ、天井の高さ、オリエンテーションのとりやすさなど、空間的な余裕故の適性感があり、「購買意欲がそそられるような」空間になっていました。あの規模なのに、ついつい歩き回ってしまい、想像以上に時間を費やしました。背広姿のおじさんが一人でふらりと来にくいところである事は間違いありませんが、ベビーカーを押すヤングママが多かったのは、いかにもTOKYO・ナウオンタイムでありました。

 

kawai3.png屋上の森も「え、こんなに大きいの?」と思う程のスケール感。ここは特に、床面の凹凸の大きさ、ベンチまで含めて、ごつい寸法で造られたデッキや直行させないグリッド、視線の抜けの大きな壁面などが巧みに組込まれていました。

びっくりしたのは植栽樹木。根っこの大きさは私の常識を超えていました。オープンしてまだ間もないのだから植栽全体はか細い状態ですが、葉の勢いは強く、四季を通じて花の咲く木が多く植えられているので、おそらく数年後には文字通り「森」に見えてくるはずです。(大きく育った時の根の大きさにどう対応するかはまだ先の話。今は大きく育つことの方が大事。)

要は全体のスケールが私の想像よりも2段階程大きく造られていたため、欧米などで感じるゆったりした空間性がバランス良く出来上がっている訳です。

 

行ったのは平日の午前中で、客層も客数も限られていたのかもしれませんが、表参道からも明治通からも見つけやすい大きさと外形、色です。当初上層階壁面の茶色は、何でこんな地味な色を?と思いました。が、あの大きなスケール感のある凹凸と、六角形のエンボスパネルのテクスチュアのある壁面とで、既に視認性がピークに達するので、特に色で強調する必要はなかったのでしょう。加えて凹凸の隙間から緑が見えているため、土や木の色にする事で森のイメージを出したのか、と素直に受け取りました。

さすがに代々木の森と表参道のケヤキ並木をつなぐ」という説明は強引と思いましたが、結果としてあの場所に天空の庭園、いや森園を設けて人を引きつけるのは成功しているようです。

 

kawai4.pngついでに言うと、実際の設計と施工は竹中工務店で、細かい部分やサインデザイン、裏方の納めまで配慮が行き届いていました。あの規模であの精度の高さはさすがという印象です。どのスペースにも安心感が漂い、リッチな気持ちで買い物や滞在ができます。安心感というのは、建物の用途と規模を問わず、最大最良の魅力です。デザインアーキテクトである中村拓史のアイデアがあるにしても、彼の貢献部分は、この建物全体から見ると半分以下です。それもエイヤでやってみて良い方に転んでくれた、という感じ。実際にこのスケールの建物をあの質にまで高めたのは竹中の力でしょう。日本のスーパーゼネコンの力恐るべし。

 

屋上緑化は多くの条例などで義務付けられていますが、実態は、忘れ去られた屋上の、忘れ去られた枯れ葉というのがほとんどではないでしょうか。屋上緑化を義務付けるなら、その管理のソフトウェアや、屋上への階段設置などアプローチのしやすさなどもワンセットで義務付けるべきです。

kawai5.png特に商業施設の場合は、店舗から直接アクセスできる事を必須条件にすべきで、どんなテナントでも、客が店と一体で歩き回る事が想定できれば、放りっぱなしにするはずはありません。

当然、維持管理に相応の予算と手間をかけるようになり、消耗品(たとえばデッキ材)の交換なども頻繁に行われるはずです。コストパフォーマンス性は悩むところでしょうが、購買意欲を少しでもそそる仕掛けなら、またたとえ豪雨でも、雨や雲の流れて行く様子を中からゆったりと見渡しながら食事や買い物ができるような空間があれば(店舗内にそれだけの広い開口面が必要で、商品への紫外線対策とか、暑い寒いとかのコントロールももちろん必要です)、やはり人はそういうところで買ったり食べたくなるんじゃないかなあ(と、設計者はつい夢想してしまいます)。

この建物では十分それが意識されており、客は屋上に引き上げられ、森を徘徊してしまいます。店舗へのシャワー効果も目に見えるようでした。

 

kawai6.png教訓。

商業施設は客が入ってなんぼの世界ですから、店内のことだけしか考えずに中途半端な造り方してたら、かえって損。都心に森を思い切って造ればもちろん環境配慮型です。それが実利に結びつけば皆やるはず。

当然バリューも上がるはず。

 

こうしたきめ細かな感じや実感を持たせる設計努力が、環境配慮型不動産の評価につながるのはいつの日のことでしょうか。

 

       

                 

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