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地熱鑑定士への道 序章

日本ヴァリュアーズ東京本社の中澤です。

 

 今回は「地熱」をテーマにご報告します。

 

 (おそらく)2012年3月以来!のかなり久しぶりの投稿となります。
この間、世の中的には「メガソーラー」という言葉が多く聞かれ、当ブログでも数度にわたって取り上げられました。
不動産鑑定士の立場からも、メガソーラーに関わる用地取得やファンド組成など、鑑定評価の役割を担う場面が必ずあるものと言え、実務的にも実際の案件として成立性が認められるため、身近な存在となりつつあります。評価の方法論については、私は全くの勉強不足ですが、素地価格、開発コスト、収益の換金価値、建設期間、回収期間等々のアイテムが明示されることから、なんとなく手法を構築しやすい雰囲気を感じます。

一方で、一本のストーリー性のしっかりした古典的な鑑定評価書を作成することを考えたときに、イメージが難しい「何か」があることに気がつきました。それは、収益力の原資となるのが太陽光であり、対象不動産自体には存在しないこと、地域条件、個別条件として「日照」を比較検討することの不慣れさ、そして何より、メガソーラー立地には資産としての「血液」の欠如感を感じることです。

 

当社の業務理念のひとつに、「私たちの仕事の対象は、ヒトと資源の結合としての“営みのある空間”です。」というものがあります。

 

私が日頃鑑定業務を行なう上で拠り所としている価値観でもあります。ヒトがハコの中にいて、収益というものは通常生じるものであるはずです。メガソーラーのメリットの一つとして、比較的容易な維持管理が挙げられることがありますが、同時にメガソーラーを設置することによる雇用の創出や設置地域への経済貢献がほとんどないとも言われています。

 

私は決してメガソーラーの進展に否定的な人間ではありませんが、夜間発電がほとんどできないことや、天候依存の側面もあり、代替エネルギーとしての弱さを内包していることが気がかりです。不動産鑑定士としては、先に申し上げたような問題意識もあり、地域性や個別性、収益力のコアが対象となる不動産に明確に現れる「地熱」立地の評価について、ライフスタディにしていこうと思っています。

ご存じの通り、日本列島は火山列島、温泉観光は日本の観光産業の礎です。日本の地熱資源量は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位で、2010年度の環境省による再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査によると、日本における地熱の理論的埋蔵量は、約3300万kW(100万kW級の原発33基分)と試算されています。地熱の有効利用は日本特有の地域性に真正面から向き合うテーマであり、既存の温泉地や国立公園内といった個別的な条件下において、に未曾有の地熱エネルギーの有効利用が議論されうる特性を有しています。収益力のコアは、地中に有り。誰にとっても平等な太陽光ではなく、地域の格差があり、そして同一エリア内でも最適な掘削箇所がピンポイントで必要となるような個別性を有しています。

 

地熱発電については、CO2エミッションが少なくクリーンである(太陽光発電と比べても約1/3少ない)こと、地球内部に蓄えられた豊富な熱エネルギーは半永久的ともいえる供給が可能であること、太陽光や風力に比べ天候に左右されず、安定した持続可能なエネルギーであること等が長所とされています。一方で、草津温泉出身の私は肌身で感じるのですが、温泉地や温泉業界関係者からの反対はかなり根強いものがあります。反対の声は、基本的には地熱プラントの開発によって、周辺に所在する既存の温泉域における湧出量の減少、泉温の低下、成分変化、果ては枯渇といった危惧が懸念されるというものです。私が草津で「地熱発電賛成!」などと言えば、おそらく村八分です(笑)。皆に嫌われるのは嫌ですが、地熱の有効利用について次の2つの側面から、じっくりと考えていく必要があると思っています。

 

1.技術革新

地熱反対派のレポートは数多くありますが、その論拠は概ね共通しています。社団法人日本温泉協会が2012年4月27日に発表した声明文「自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から【無秩序な地熱発電開発に反対】します」において、反対派の意見が集約されていると思います。先に触れた既存の泉源への影響に加え、地熱発電において必要な蒸気や熱水をくみ上げる生産井の減衰により新たな補充井が必要となるため、真の再生可能エネルギーとは言えないこと、それから発電後の蒸気や熱水に高濃度の硫化水素やヒ素などが含まれ、廃棄や土壌汚染の問題があること、掘削の影響による地滑り、地盤沈下、地震、水蒸気爆発などの発生が危惧されることが挙げられています。
これらの危惧は、確かに既存の地熱発電において該当する問題であるようですが、研究機関や実務レベルでこれらの危惧にソリューションをもたらす技術の開発が行なわれていることは私も最近まで知りませんでした。まだまだ勉強不足ですが、ひとつには「加圧水型地熱発電」(GEEP)という技術です。これは「地下の熱水をくみ上げる方式ではなく、加圧された純粋を使用し、地熱のエネルギーにより高温化された熱水を戻す循環式方法」だそうで、また、加圧して単相流で取り出すために、出力の減少がないため、生産井の減衰がないとされています。また「完全クローズ型システムなので、汚染枯渇の問題を劇的に緩和」するとのことです(
http://www.geep.co.jp/geep.php)。

規模はより小さくなりますが、もうひとつ注目すべき技術として「バイナリー発電」というものがあります。温泉の熱水など比較的低温(70℃~)の地熱エネルギーを利用する発電システムで、水より沸点の低い代替フロンやアンモニアなどの媒体を沸騰させタービンをまわす発電方式です。既に発電機の商品化がなされており、IHI社の小型バイナリー発電装置「ヒートリカバリー」は取り扱いも簡単で、まとまった温水が排出される工場や温泉では、この装置を複数台設置し、温水を各装置に分散させて発電することもできるそうです。
このような技術革新が進んでいること、反対派の皆さんにも是非耳を傾けて頂きたいところです。

 

2.非発電プラント的有効利用

草津温泉(草津町)では、観光客はもとより住民が当たり前のように享受している地熱の有効利用が実は1970年代から進んでいます。もちろん入浴のための温泉のお話ではありません。高温の「万代鉱源泉」を利用した、プレート式熱交換機による温水供給(約60℃の温水が各家庭の蛇口をひねれば出てきます!)と、融雪道路(同様にして作られた温水管、あるいは廃棄する温泉を直接流す管を道路下に埋設して道路表面熱により雪を融かす)の整備です。これらの地熱利用をスタートさせた時の為政者の先見の明には頭が下がります。2004年2月には、「草津町地域新エネルギービジョン」として、今後のさらなる地熱の有効利用の可能性も謳われたりしましたが、その後のインナープロモーションは進んでいるとは言えません。電力供給を東電に頼らず、地熱を活用したエコタウンとしての行き先をビジョン化することは、景勝地としての個別性と相まってより訴求力の高い観光地になるためにとても魅力的だと考えます。プラント建設に反対するばかりではなく、先のバイナリー発電との組み合わせによるなど、真のエコタウンの実現可能性を考えるのはいかがでしょうか。

 

最後は何か地元批判のようになってしまいましたが、このように地熱発電は地域資源と密接に関わる点で鑑定士にとっては大変に興味深いテーマだと思います。私のバックグラウンドから、「温泉の評価」について意見を求められることがありますが、「地熱の有効利用の一としての入浴泉の評価」にとどまらず、これからもライフスタディ、続けていきたいと思っています。続編(たぶん1年後くらい。。。)をお楽しみに。

 

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