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コラム「令和の秋と灯台と」

建物で一番好きな「種別」と言えば、これはもう迷うことなく「灯台」です。断崖絶壁に凛として聳える孤高のフォルム、暗闇を裂くように伸びる真っ直ぐな光、青空に映える白い壁。折に触れて写真集を開いては、全国に点在するまだ見ぬ灯台に想いを馳せています。当然ですが、大抵の灯台は鉄道駅から離れた海際にひっそりと立地しており、車の運転免許を保有しない私は、恥ずかしながら未だ数える程度しか来訪できていません。学生の頃から、いつかは訪れたい名作灯台のリストを暢気に作り続けているのですが、ついぞ最近、悠長なプランを脅かす剣呑な情報を耳にしてしまいましたので、この場を借りて皆様と共有させて頂きたいと思います。

我が国における西洋灯台の初点は、1869年の観音崎灯台です。それから約150年、2019年現在国内に存する灯台は、3,151基となっています。意外に多く感じますが、この数字はピーク時の2003年からは約6%の減少であり、驚いたことに、2023年までには更に200基程度が廃止決定されているそうです。つまり現代において、灯台は緩やかに淘汰されつつあるのです。

言うまでもなく、背景にはGPSの普及があります。当該技術の発達により、灯台のライトに頼ることなく船の位置情報が把握できるようになり、船の操縦者における灯台の必要性が加速度的に低下しました。また、明治期に築造されたものを中心として、耐震構造になっていない灯台が多く、維持修繕費等が多額となるため、止む無く廃止されてしまった例も多いようです。

日本の灯台の父と言えば、リチャード・ヘンリー・ブラントン氏ですが、氏の作品を筆頭に、灯台には、その機能のみならず、建築物として歴史的にも文化的にも高い価値が認められます。後世のために、1基でも多く保全されることを願ってやみません。ちなみに、日本にはかつて約1,100人もの灯台守がいたそうです。「灯台守」。浪漫溢れる言葉の響きです。(祐紀)

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