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コラム「EntrepreneurなEstablishmentが席巻するアメリカはやはり面白い」

「EntrepreneurなEstablishmentが席巻するアメリカはやはり面白い」

不動産鑑定士 磯部裕幸, CRE, FRICS

日本ヴァリュアーズ株式会社 会長

 

3月末に開催されたSPIRE(Stanford Professionals in Real Estate)、CRE(Counselor of Real Estate)とRICS(Royal Institution of Chartered Surveyors)共催の国際カンファランス「Global Cities」のプレ・ツアーで、Googleplexと呼ばれるGoogle 本社(サンフランシスコ郊外、Mountain View) を訪れた。インターネット利用者でGoogleを知らぬ者も使わぬ者もいないだろう。Stanford大学博士課程の学生が1997年に二人で創業した若い会社が、世界の常識をさまざまな面で塗り替えつつあることも申すまでもない。Amazonの1995年とはほぼ同時期だが、マイクロソフトの1975年、Appleの1977年と比べれば格段の新しさだ。

そうした中、”不動産”という視点でのGoogleもまた魅力に満ちた玉手箱であった。世界40ヵ国以上で140以上のLEED認証ビル(770万SF-霞が関ビル4棟分以上か)を使用しているというだけで巨大不動産ユーザーだと言えるが、本社のあるBay Areaには7,000人以上がGooglerとして働き、200台の白いGoogleバスが100以上のシャトルバス停留所を巡回して年間300万人が乗車(2014年)し、Googleカラーのスタッフ用自転車が街の至る所を走っている。また、世界中の社内カフェやマイクロキッチンでは、年間2,800万食が提供されているという。紛れもなく営利企業であるにもかかわらず、不動産デベロッパーとしてのGoogleによる本社開発コンセプトは。健康や環境はもちろんのこと、遊びと賑わいと出会いを生み出す公共広場空間の創設ではないかと思ったほどだ。

旧世代の私としては、業種的なCreative性、企業としての超高収益性ゆえだと別世界化して一蹴しようとするのだが、そうした固定観念こそが革新に対する阻害要因なのだということを、その後二日間のカンファレンスで身に沁みて味わうこととなった。

Airbnbでグローバル戦略を率いるChip Conley氏の基調講演では、創業後8年足らずで世界約190ヵ国、34千都市で約200万室提供する巨大勢力となったにもかかわらず、一室一室を提供するホストの意識と利用者の満足度向上というユーザー目線を最重要視する感性の鋭さを依然維持している企業文化に驚くばかりであった。生産年齢人口に占めるミレニアル世代の増大と彼らの志向性から、従来型開発における私的・公的駐車スペースは再利用やコンバージョンが必要になるという都市計画家Gerry Tierney氏の予測。そうした中で物件価値は、住/職が徒歩圏内で完結する都心部開発案件がもっとも上昇していくとするラサール・インベストメントCEO、Jeff Jacobson氏の見通しも出色だった。都市のリスクとしてのテロ、mobility手段の転換、持続可能性実現の具体策、都市インフラ構築の巨額資金に対する民間資金活用の方法論、などテーマは多岐にわたった。米国西海岸では起業後間もない新興大企業が続々誕生し、既存大企業の側は新興企業や生まれたてのベンチャーに助けを請うという相互関係が定着しているが、カンファランスもまた、老若・新旧・大小が対等に混じり合うイノベーションの場そのものであった。果たして日本の不動産・都市創造領域で、そうしたシーンは期待できるのであろうか。

 ㈱不動産経済研究所「不動産経済ファンドレビュー(2016/5/5 No.392)」掲載記事

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