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コラム【そろそろ日本も成長から成熟か】

そろそろ日本も成長から成熟か

不動産鑑定士 磯部裕幸, CRE, FRICS
日本ヴァリュアーズ株式会社 会長

初冬のヘルシンキに休暇で一週間ほど滞在した。フィンランド(以下FIN)は日本から最も近いEUらしいが、以前トランジットで数時間過ごした空港が気に入って、是非一度降りてみたいと思っていたのだが、その思いがようやく叶った。人口約60万の首都は、入り組んだ湾と起伏に富んだ森の中の公園に囲まれ、岩盤がそこここに露出する美しい街並みであった。恐らく看板規制が厳しいからなのか、ダウンタウンの中心ショッピングゾーンから数百メートル離れただけで、古い中層アパート群の低層階を利用した店舗や事務所に、Windowサイン以外看板はほとんどなく、どうやってビジネスが成立するのかと首をかしげたくなるほど人通りも少ない。ヨーロッパの多くの都市もそうなのだろうか。東南アジアの混沌としたスピード感とは異なる成熟した豊かさに満ちていた。とりわけ目を引いたのは、大小問わずほとんどの公園に、フェンスで囲って安全を確保した幼児用のプレイガーデンが設置されていたことだ。市街地で見た建築現場も、新築工事ではなく旧来建物のリノベーションがほとんどだった。
筆者はここ一年強、東南アジア、とりわけミャンマー(以下MYA)に片足を突っ込んで過ごしてきているが、FINと日本とMYAをアトランダムに比べてみたら、これからの日本にとってのヒントが少し見えるように思えてきた。
FINは、日本とほぼ同じ面積の中に人口約550万人(日本の約4.3%)のみ。人口密度も日本の5%以下。GDPは4.8%にすぎないにもかかわらず国民一人当たり名目GDPはUSD43,482で日本の38,882より10%以上多い(2016 IMF推計値)。一方MYAは、対日本比で面積約1.8倍、人口約41%、人口密度約23%。GDPは約1.3%、国民一人当たりGDPは約3.2%に過ぎない。二次・三次産業の構成比は、日本98.8%、FIN97%、MYA62%。2016年の対前年経済成長率は、日本1.03%、FIN1.93%、MYA6.12%。ミャンマーは、まさしくこれからの国で成長余力に満ちている。人口の中央年齢がMYA29才、日本45.9才、FIN42.3才(WHO調査)ということからも明らかだ。
さて、日本は健康寿命74.9才で194ヵ国中世界一(WHO調査)だ。FINは71.0才-28位、MYAは59.2才-127位。健康なまま長生きできるありがたい国なのだ。一方UNSDSNが公表しているWorld Happiness Reportが示す幸福度ランキング(対象158ヵ国)によれば、FIN6位、日本46位、MYA129位となる。しかしながら、世界寄付指数ランキングでの一位はMYAだ(英国Charities Aids Foundation調査-FIN37位、日本111位)。幸福度の低い途上国だからといって、心が貧しいことにはならないのだ。
日本でMYA型の経済成長シナリオを描くのは当然ながら無意味だ。一方で、これまでに蓄積された膨大な国内ストックを効率的に再配分しそれらを持続的に活用していけば、中長期的に国内市場が縮小していくとしても、FINに見る安定的な成熟社会への転換は比較的容易なように思えてきたのだが…。

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