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コラム【評価業務の原風景 in Myanmar】

不動産鑑定士 磯部裕幸, CRE, FRICS
日本ヴァリュアーズ株式会社 会長

 

時間が経つのは早い。Due Diligence なる仕事に従事するようになってから20年以上か。” 土地神話” に支えられたバブル経済が崩壊し、不動産の価値・価格をそれまで構成していた軸が完全に崩れ去った中、金融機関は90年代後半以降不良債権をこぞって売却せざるを得なくなった。その際のメジャー・プレイヤーが外資系ファンドだったことは言うまでもない。市場が機能不全に陥ったところに、” 日本の不動産” のアマチュアが主役として登場したのだ。ある意味市場代弁者としての役割を担っている不動産鑑定士としては、当時ほど我々のリサーチ・スキルが問われた時代はなかったかもしれない。不良債権のバルクセールに伴う不動産デューディリは、入り組んだ方程式から実証的な解を導き出す、いわば謎解きのような作業の連続であった。解がある程度見えている中でその正当性をロジカルに検証するのではなく、あくまでもXを解くことが命題であった。逆に言えば、評価主体に対してかなりの期待と信頼が寄せられていたのだとも言える。
ところで、途上国における評価・調査作業も、それと基本同じだ。市場の透明性はほとんどなく、ベンチマークも存在せず、公的機関で公法上の規制等を調査できるというのはほとんど幻想に等しく、不動産登記も信頼に値せず、ましてや頼りになる専門家の存在を地元で期待することも難しいからだ。筆者がほぼ月に一度訪問しているミャンマーは、まさにその典型だ。
アウンサンスーチー女史率いる国民民主連盟が政権を握ったことで各国による各種経済制裁の解除も進み、進出先、投資先として、今もっとも注目されている国の一つである。一方、国民一人当たりGDPはUS$1,204で、シンガポールの2.1% 、日本の3.3% (2014 年-世界銀行調査) にもかかわらず、ヤンゴンにおける世界標準クラスの事務所賃料は月額US$90/㎡とシンガポールよりやや高く、駐在員用借上住宅の家賃も月額US$4,400とシンガポール並み水準なのだ(2014 年-JETRO 調査) 。建築ラッシュが続く高層分譲マンションの分譲価格が日本円で2,000 ~ 9,000 万円する中、政府系デベロパーによる大量供給が期待されているローコストハウジングの分譲価格は100 万円台からという価格差にも驚く。
” 標準的” な水準は市場で醸成されていないし、不動産価格と経済指標との相関もはっきりしない。途上国にありがちな傾向として、外需向けと内需向けで価格に大きな隔たりがあり、外需が牽引する高質なプロジェクトが全体的な開発レベルの底上げに繋がるということなのだろうが、評価業務に際しての取引事例や賃貸事例は、関係者からの直接ヒアリングによって収集するしか手立てはない。価格変動率についても、ベンチマークがない以上多くの精通者面談から把握するしか方法はないのだ。データベースが整備され” コンプ” が容易に入手できる先進国からは想像もできないが、それは、いわば鑑定評価の原風景なのかもしれない。そうした実務を積み重ねていくことで、市場( があるとすればその一端) が少しでも見えてくるといいのだが…。

 

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