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シニアハウスブログ 第11回 「介護報酬の引下げ」

日本ヴァリュアーズ東京本社の小川です。

最近、新聞を賑わせている介護報酬の引き下げ。この引下げの理由と今後の問題について考えてみたいと思います。

 

介護報酬については、第5回「介護保険制度について」でも御説明しておりますが、厚生労働省のホームページに掲載されている以下の図で復習してみましょう。

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簡単に申しますと、例えば有料老人ホームの入居者は、家賃に相当する料金、管理費や食費に相当する料金を支払いますが、要介護・要支援の方ですと、介護保険の自己負担分も支払うことになります。

現在の自己負担率は1割ですので、事業者には入居者から1割分、地方自治体から9割分の介護報酬が入るわけです。

某施設のホームページを見ると、家賃及び管理費相当が25万円、食費が4万円、そして要介護1の方の場合は、1割の自己負担分として18,370円を支払う必要があると書かれています。よって介護報酬として施設は183,700円の報酬を受け取ることになりますので、これらを合計すると一人当たり、月474,000円程度の収入になります。

 

この月474,000/人で、介護保険制度に沿った介護を行い、食事を提供し、職員の給与、福利厚生、年金の負担をし、地主に地代を支払い、その他もろもろ管理するための費用を支払い、民間企業であればその上で利潤を出さなければなりません。

安い人材を出来るだけ少なく雇い、1人の職員が多くの入居者のお世話をすれば、かなり利益が見込めるかもしれません。しかし、職員の体制は公表されますので、あまり省力化すれば、そもそも入居者が集まらないかもしれません。

 

今回、介護報酬が2.27%引下げとなりました。9年ぶりのマイナスとのことです。ただ、介護職員の処遇改善については1.65%を別枠で確保し、さらに重度者向けサービス強化に対する加算等で0.56%分を確保するとされています。よって、これらを除いた実質的な引下げ率は4.48%となるとのことです(週刊高齢者住宅新聞2015121日号を参考)。

これだけの引下げの背景は、まず、介護保険制度財政が厳しいことが挙げられます。これは税金ですから、税収が増えない限り引き上げるのは難しくなってきます。

他には、介護サービス事業者の利益率が高く、特に特養ホームの多くは多額の内部留保を抱えていることを理由としているそうです。

一方、介護事業者側は正反対な意見を述べています。例えば、特養ホームは3割が赤字で、ボーナスカットや非正規雇用への切り替え等によって、職員の処遇は悪くなる一方であるとのことです。そして、このままでは多くの介護事業者の経営が成り立たなくなってしまうという懸念が大きくなっているそうです。

それにしても、上記のようにそれぞれの立場からみた状況分析は、こんなにも真反対になるものでしょうか。特養ホームについての内部留保と赤字の関係は何なのでしょう。また、安い給与水準でハードな仕事のために、慢性的に人手不足となって困っている一方、本当に介護事業者の利益率は高いのでしょうか。

下記の表は、厚労省が実施したH26年介護事業経営実態から引用したものですが、介護事業者全体の利益率が分かるものとなっています。

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これを見ると、26年調査で8.7%の利益率となっています。確かに一般企業の水準からすると高いように思いますね。ただ、この表は全体としての数字なので、有料老人ホームや特養ホーム等のサービスの種類によっても数値は変わってきます。

利益率が高いのはデイサービスの10.6%、逆に低いのは定期巡回訪問介護サービスの0.9%であり、サービスによって利益配分に偏りが目立ってきたことも問題になっているようです。

ただ、介護事業者は一般的な企業に比べて、経営破綻による影響が大きい業種であると言えます。特に施設に入居してサービスを受けている方にとっては、その施設が家のような存在ですし、あまりギリギリで経営するのも如何なものかと思います。

また、この利益率は、安い人件費の上で成り立っているものであり、今後、これ以上の人材不足になって給与を上げざるを得ない状況になると、瞬く間に赤字に転落する可能性もあるでしょう。

本来、介護報酬の引下げは、利用者にとっても費用が安くなるわけですから、歓迎すべきことなのかもしれませんが、それによって介護事業者が疲弊したり、破綻したりしては元も子もありません。

もちろん、今回の見直しは多面的に検討を重ねた結果なのでしょうが、どうも現場の実態を本当に把握してらっしゃるのかという疑問が湧いてきてしまうのが正直なところです。

また介護事業者においても、出来る範囲の情報公開を行って、一般の方にも理解を得られるように努力すべきだと感じました。

 


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