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2013年は多様な軸足に立ちたい

不動産鑑定士 磯部裕幸, CRE, FRICS

日本ヴァリュアーズ株式会社 代表取締役

 

 2012年も、一年を振り返るべき最終月を迎えた。このところ数年、無意識に常套句化しているさまざまなネガティブ・フレーズが、今年の暮れも色々な場面で大いに語られるのだろうか。やや空元気かもしれないが、初めての体験を通して、個人的には新鮮なスタート地点に立てるような気がしている。

 

ミャンマーが世界の注目を浴びることになったということを知り、夏の終わりの何日間かヤンゴンを旅行した。民主化の掛け声は本物なのだろう。人々は開放的で明るく、街は活気に満ちていた。面積は日本の1.8倍、人口約6,200万人を擁する東南アジア最大級の国ミャンマーは、名目GDPが山梨県とほぼ同じ、国民一人当たりGDPが日本の約1.8%。世界でも最貧国の一つだが、今やアジア最後のフロンティアと言われることになった。アジア各国はもとより、世界中からヒトとカネがここを目指し、投資と開発と発展と成長と消費が、一気に始まろうとしている。

不動産に関しても同じだ。ファンダメンタルなインフラが不十分なことはもちろん、これまで「市場」というものが無いに等しかったわけであり、住宅もホテルもオフィスも商業施設も工場も、深刻な需給ギャップから急激な価格上昇が進んでいるとのことだ。

 

10月後半、IVSCの年次総会参加のため、イタリア・ミラノに、10日ほど初めて滞在した。ギリシャ、スペインに次ぐ財政破綻危機への懸念から、GDP世界第7位の経済大国は相当に疲弊しているのではないかと思っていたが、街は市民や観光客で活気に溢れていた。イタリアは、面積が日本の約5分の4、人口約6,100万人。名目GDPは日本の約37%、国民一人当たりGDPが日本の約80%だ。

ヨーロッパの多くの都市がそうであるのと同じように、成長と発展から得られる直接的な果実は過去に十分謳歌され、大小の波が押し寄せた長い歴史の積み重ねの結果としての現在は、経済も人々の生活も、成熟と安定の下で淡々と持続しているかのようであった。客観的な不安もどこ吹く風、とでも言おうか。郊外や一部の再開発ゾーンを除けば新築物件の供給が少ないというのも他のヨーロッパ諸都市と同様だ。

 

この二つの国の人口はほぼ同じ。面積も日本と大きくは違わない。経済規模で言えば先進国たる日伊とミャンマーとでは大きく異なるし、将来に向けた成長ポテンシャルと政治的・社会的なカントリー・リスク、成熟市場としての安定的パフォーマンスと信用不安リスクなど、投資先としての軸はまったく異なっている。

 

 さて、かつての日本人は成長するためにリスクを恐れなかったが、今は安定とリスク回避が最大の目標になっている気がしてならない。国内不動産は確かに「間違いが少ない」かもしれないが、「間違いが起きる」のをひたすら回避していると、そもそも不動産でなくなってしまわないだろうか。来るべき2013年は、形を創りそれを動かしていくという、不動産ビジネスの神髄が発揮され、日本からも多くのプレイヤーがその舞台を世界中に求めて行く年にしたいものだ。

  (㈱不動産経済研究所「不動産経済ファンドレビュー」2012.12.15 No.274号掲載記事より)

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