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シニアハウスブログ 第6回 「建築事業としてのサ高住」

日本ヴァリュアーズ東京本社の河合です。

あと数年で前期高齢者の仲間入りです。知らぬ間に、私自身がいつ介護のお世話になるかもしれない、その時はせめて子供たちの迷惑にならないよう、どこかの施設へ…と考える年齢になってしまいました。またその前に、夫婦のうちどちらかが倒れたら、老老介護で互いの余生を半分それに費やすことになり、とても生涯現役だなんて言っていられなくなる…そんな恐怖に苛まれる今日この頃であります。

 

私は国民健康保険に入っていますが、介護納付金とやらを何年か前にドカ〜ンと新設されてびっくりしていたら、あれよあれよという間に増え続け、今では毎年、医療費も後期高齢者支援分も介護納付金分も全て限度額いっぱい!年間合計75万円にもなっています。

私自身は、幸いなことにほとんど医者要らずでしたので、この搾取のされ方は釈然としないものがあります。が、国の財政の逼迫感はひしひしと伝わって来ます(我が家も逼迫してるけど)。

 

さて、私は建築設計者です。

2011年に、サ高住の登録制度が立ち上がった時、いくつかの関連プロジェクトに顔を突っ込みました。新築超高層マンション1棟何百戸を丸ごとサ高住にする、という大胆かつ大らかな計画案の対案を求められたときは、こちらが意見を言う前に、オーナー側が再考するといって取り下げました。(そりゃそうでしょ、楽観的すぎますよ。)。

 

建築事業としてのサ高住の可能性研究・企画を半年ほどしたこともあります。今回はその時感じていたこと、および現状との差などを、少し振り返ってみます。

 

当時は、新しい事業への期待と不安要素が折り混ざって、事業者側も全く先読みができない状況でした。一つの取掛かりとして、数十床規模の病室を持つ、中小規模病院の経営変換にともなうサ高住への改修ニーズを設定しました。背景には、医療・福祉・介護費用の増大抑制から、自宅療養への転換促進という国の施策がありました。多くの中小病院にとっては、経営の大変換を迫られた時期でもあり、入院施設を撤廃して当面、駐車場などにするか、土地を切り売りする所も出始めていたので、サ高住の新築やリニューアルは、潜在的な需要が強く見込めました。しかし、病院は医療のプロではありますが、サ高住は介護や福祉などの専門事業者、また家賃支払いシステムが複雑なため、賃貸事業者などとの共同作業が不可欠です。未知の要素への不安で、二の足を踏む所が多く、結局はまだ様子見ということになりました。

 

そのため、企画側も、サ高住を団地再生や空き家利用の起爆剤、ひいては多世代交流を促進する町おこし事業の方に使えないかという方向にシフトしていきました(私の企画はその辺りで打ち切りになりましたが、今やこっちの方が世の中的には大化けしつつあります。もっとしつこくやっときゃよかった)。在宅透析システムなど、差別化を図るかなり具体的な想定まで行なっていただけに、少し残念でしたが、ハードだけでは捉えきれない難しさも勉強させてもらいました。

 

サ高住は、単純にハードを作る事だけ考えるのなら、その規模や構成はワンルームマンションとあまり変わりません。ただサ高住として機能させるには、現場に応じた福祉・介護部分の設置の仕方、さらに効率的合理的な運営形態が組込まれないと、意味をなしません。またワンルームマンションに近いのは、いわゆる自立型(健常高齢者向け)であって、介護型(入居者が外出できず、ほとんど訪問介護を受けるタイプ)は、従来の有料老人ホームに近いので、生半可には手が出せません。

 

規模の想定でも1000m2を超えると開発指導要綱に引っかかって工期が長くなるとか、スプリンクラーが必要になるなど考えなければなりません。その規模なら介護型で戸数をかせぎ、共用部は別棟で建てた方が建設コストを抑えられるとか、ソフトとハードが絡み合ったいろいろな事業ノウハウが求められます。

 

 

研究当初はこの辺がまだ曖昧だったため、とにかく自立型の基準である25㎡/戸以上を前提としていろいろ計画していました。しかし、2014年の現状は、私どころか国の意向とも異なる介護型(共用部分を別に設けて18㎡/戸以上)がその大半を占めているのです。

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出典:一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」より

 

つまり、入居者にとっては、介護が必要な時点での安心した暮し、ということが第一なので、仮に、自立型のサ高住に入っても、いつ訪れるか分からない介護状態に陥った時、すぐに介護型のサービスが受けられるようになっていないとなかなか入居には踏み切れない、ということです。動けなくなった時には25㎡の広さや家賃は負担にさえなるからです。

賃貸事業者にとっても、サ高住は滞納されても強制退去を求めることはできません。また、いったん登録してしまうと(確か10年間は)高齢者以外を受け入れることができなくなるなど、大きな経営リスクがあります(補助金を受け取っていることもあり、報告義務があります)。自立型サ高住であっても、ある程度の介護や医療への備えを用意できなければ競争に勝てない、厳しいビルディングタイプなのです。

そうした試行錯誤を経て、今は一般賃貸とサ高住を混在させたり、自立型と介護型を別棟併設して自立型の入居者は優先して介護型に移ることができるようなケースが増えてきています。

 

事業者側からの視点でもうひとつ。

 

サ高住は、それ以前の、例えば高専賃(旧・高齢者専用賃貸住宅)と違って、有料老人ホームとしての届出は不要になりました。つまり設置基準などで細かな指導を受けずに建設できるので、事業者にとっては大変有利です。加えて制度立ち上げ後5年間は、補助金や税の優遇措置も受けられます。従って、建設業者や不動産業者などの異業種業者でも、サ高住の開設者、運営者になることが可能なため(というより、賃貸事業のプロが入りやすい環境を国が整えてくれた、とさえ私には見えました)、我々の新ジャンルのひとつとして道が開けたような印象がありました。下のグラフは第3回のブログにあったものと同じですが、当初からの新規登録件数を示すものです。確かにこうした動向を受けて順調にサ高住は伸びているようです。しかし、よ〜く見ないと分からないもう一つの逆傾向も読み取れます。

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出典:一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」より

ヒントは、登録棟数(青棒・グラフは累計です)の月別の数差と、各年度末(3〜4月)前後で中折れ状態になっていること。平成24年3−4月時は、月300棟以上の申請がありました。最初の登録申請年でもあり、従来の高専賃からの登録替えラッシュです。その後、150棟超/月で順調に推移しますが平成25年3−4月期にたった34棟に落ち込んで、そのあと伸びが鈍り始め、平成26年同期は消費税率引き上げの駆け込み需要はあったものの、当初の伸びは落ち着いてしまったように見えます。

平成25年度末以降の落ち込みは、登録数の急増により競争が激化しはじめ、価格競争により事業性が悪化したため、と分析されています。加えて建設費高騰の波が押し寄せた時期とも重なっているのでおそらくダブルパンチを受け続けているのでしょう。競争激化の元をたどれば、異業種の参入を可能にした前政権時代の制度緩和があり、アベノミクスの効果がまだ及んでいないのかもしれません。来年平成27年3月は減税措置の期限(延長される可能性はあります)ですし、消費税の再引上げも見込まれます。若干の増加はあるでしょうが、建設費が落ち着かなければ、その後はどうなるのでしょう。

 

しかも、基本的に国は自宅療養・介護を進めたい訳で、24時間巡回サービスなどを利用した介護サービスの充実に軸足をおいています。前述したように、あまり介護型のサ高住の建設が進むのは国にとっては良い傾向ではありません。最近では、関連福祉施設の併設や集約によるコンパクトタウン化などを盛んにPRしています(実際その方が利用者から見て安心な面もあります。)が、やっかいなことにサ高住は国交省と厚労省の共管制度です。片方だけの都合で制度改良が進められるとは思えません。

 

どう施策が変換して行くかは予測がつきませんが、作る方としては、医療・福祉・介護諸施設との連携,近接、複合化を図りつつ、同時に町おこしのため、若年層や子供を含んだ多世代間交流を図る仕組みや仕掛け、空間構成を考えて行かざるを得ません。逆にそういうケースでないと、成功しにくいのかもしれません。

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某団地再生計画イメージ(住戸の半分をサ高住として、1階に大縁側を作り、福祉施設や保育施設、交流施設を組込んだもの)

ふ〜む、それにしても高齢社会って本当に厄介です。設計者としても、高齢者予備軍としてもこんな複雑なことを総括的に考え続けなきゃ余生が過ごせないなんて、オチオチ年もとっていられない。

私の理想は、亡き母がいつも言っていたピンピンコロリンです。

が、残された人たちのことも考えておかなきゃならないし。

 

ああセワしない人生だなあ。

 


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