03-3556-1702(東京)
052-950-2771(名古屋)

シニアハウスブログ 第8回 「介護事業の将来」

日本ヴァリュアーズ名古屋本社の松原です。 

 

最近、新聞や週刊誌で介護関連の記事をよく目にするような気がしています。109日の日経新聞朝刊に、「特養ホームやデイサービスの利用料下げ検討 政府」という記事がありました。特別養護老人ホームやデイサービスの利用料金を、2015年度に下げる検討に政府が入ったという記事です。これは、特養などを経営する社会福祉法人が、利益率が8.7%に達しており、毎年の黒字を貯めた内部留保が総額2兆円に上るという調査・試算があり、介護サービス事業者が受け取る介護報酬の改定(3年に1度改定され、2015年度は改定の年にあたる)で、サービスの単価を引き下げる必要があると厚労省、財務省が見ているとのことです。デイサービスも利益率が10.6%と高いとの指摘がある一方で、サービスの内容が伴っていないとも指摘されています。(調査結果はいずれも103日発表の厚生労働省「介護事業者の経営実態調査(20143月時点)」) 

その一方で、来年度の介護職員の賃上げにつなげる処遇改善の加算は拡充するとしています。 

とはいえ、介護報酬の引き下げは、介護事業者からの反発も強く、どう改定されるかはまだわかりません。

 

ヘルスケア事業に関わる不動産の評価において、政策変更リスクが顕在化した例と言えるでしょう。まだどのような影響があるかは明確ではありませんが、介護サービス事業の経営には少なからず影響が出てくると思われます。

政府が財政難で、国民負担を大幅に増やせないとなると、今後はこういう動きが出てくる可能性が高いと言えます。

ただ、国の行く末を考えた場合、今後、どういう社会にしていくのかを根本的に考えないとまずい状況にあると思えます。

 

日本全体で人口が減少する状況になって、特に地方圏ではその傾向は顕著です。自然減だけではなく、地方圏から大都市圏への人口移動(社会減)がその傾向に拍車をかけています。この大都市圏への人口移動が起こる理由で大きいのは働き口がないことです。その中で、ほぼ唯一地方圏での雇用先として期待されているのが医療・介護分野です。厚労省も財務省も、介護の現場で深刻な人手不足の解消の必要性は認識しており、介護職員の処遇改善の加算は拡充するとしています。確かに、介護事業者に話を聞くと、求人活動をしてもなかなか人が集まらないのが実態だそうです。名古屋圏の話ではありますが、アベノミクス以降、全体的に人手不足の状況になっており、従来は介護についてくれたような人までも、別の産業に行ってしまうようなケースが多いそうです。全国的にも、1013日付の朝日新聞朝刊で、介護職員の平均給料は月約219千円で、昇給もほとんどない実態が報じられています。同じ記事で、介護職員らが加入する労働組合の組合員数が半年で千人ほど減少したとあります。他の仕事の給料が上がったため、介護から離職し転職した人がいるためと見られています。

今後は、地方圏でも高齢化が進んだ地域では、高齢者の絶対数が減少する地域も出てきます。こうした中で、地方圏の支える重要な産業として医療・介護事業を位置づけていかないと、本当に地方が消滅してしまうのではないか、という危機感を持ちます。

 

一方で、政府は、「在宅介護」にウェートを置く方向性を示しています。ただ、これも「介護離職者5年で倍増、4050代女性で顕著」(104日付日経電子版)という記事を読むと不安に駆られます。記事によれば、2013年の介護離職者は前年比41%増の93000人。5年前の2倍だそうです。このうち、女性が7万人と76%を占め、男性も23000人います。

実際、自分も親が要介護2の認定を受け、有料老人ホームに入っていますが、もしも「在宅」で、となれば、夫婦のどちらかは仕事を続けられないだろうと思います。

介護離職者の方々が、どういう事情で仕事を辞めるという判断をしたかまではわかりませんが、現役世代の負担をできるだけ少なくするという観点からの施策が必要ではないかと思います。

 

最近読んだ本に、『日本の地価が3分の1になる!』(三浦展、麗澤大学清水千弘研究室 光文社新書)があります。この本によれば、「現役世代負担率」の上昇によって、全国の住宅地価格が低下するという研究結果があり、この「現役世代負担率」が2010年には0.36、つまり3人の現役世代で1人の高齢者を支えていたのが、2050年には0.75、つまり4人の現役世代で3人の高齢者を支える状況になるという予測になっています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の推計人口(平成241月推計)」による)

この予測に基づいて、清水研究室が試算したところ、このまま「現役世代負担率」が上がり続けた場合、日本全体の地価(住宅地)2010年から2040年にかけて毎年3.18%、30年で62%押し下げる効果を持つとされています。つまり地価が3分の1になる訳です。但し、全国で均等に地価が下落するわけではなく、かなりバラツキが出ると試算されています。(詳細は、原典参照)

 

いずれにせよ、我々が取り組んでいるヘルスケア施設の評価は、国の政策によって左右される面がある一方、この国全体の有り様を象徴的に示す分野でもあるという気がしてきました。

 


Related Posts

Sorry, the comment form is closed at this time.