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住宅新報「有識者に聞く」~磯部裕幸インタヴュー 4(最終回)

(田辺氏)

 IFRSが適用された場合、不動産鑑定評価の手法にも影響を及ぼすのでしょうか。

 

(磯部)

 IFRS(国際会計基準)を適用している国は、IVSCInternational Valuation  Standards  Council、国際評価基準委員会)の策定しているIVS(国際評価基準)の適用をセットで考えています。

IVSC1981年に、英国のRICS The Royal Institution of Chartered Surveyors、王立公認評価機関)と米国のAIAmerican Appraisal Institute、米国鑑定機関)によるジョイントベンチャーとして創設された組織です。ロンドンに本部を置き、国連の経済社会理事会により承認された非政府組織(NGO)として活動しています。主たる会員は世界各国の不動産鑑定士の団体ないし業界団体ですが、評価等に関連する政府機関や非営利の民間機関、教育機関・学者なども会員になっています。ちなみに、日本では()日本不動産鑑定協会と当社(2009年加盟)が会員になっています。

RICSの不動産評価基準は既にIVSに準拠したものになっていますし、AIも国内の不動産鑑定はUSPAP(米国鑑定業務統一基準)に則ることにしていますが、海外の評価についてはIVSに準拠することとしています。従って、IFRSが採用されると、日本でも不動産鑑定基準をIVSに収斂するように改訂する必要が出てくる可能性が高いでしょう。

 

(田辺氏)

 日本の現在の不動産鑑定基準と、IVSの主な違いはどこにあるのでしょうか。

 

(磯部)

 それほど大きな差異があるわけではありません。90数%までは同じだと言ってもよいでしょう。とはいえ、いくつかの違いがあるのも事実です。

たとえば、用語の概念の違いがあります。IVSでいう「マーケット・バリュー」(Market Value、市場価格)に相当するものが、日本の鑑定評価基準では「正常価格」になりますが、これは英訳すると「フェア・マーケット・ヴァリュー」(Fair Market Value)になり、若干「あるべき価格」の要素が入っているように受け止められます。また、日本基準では、証券化不動産や民事再生関連の不動産は「特定価格」で評価されますが、IVSではそうした概念はありません。IVSでも「特別価格」(Special Value)の概念がありますが、これは日本基準でいうところの「限定価格」(ある不動産を他の不動産と併合して取得したり、その一部分を取得したりするときの適正価格)に相当します。

また、土壌汚染に関して、日本では鑑定評価書で触れることになっているため、鑑定士がリスクを負いますが、IVSでは鑑定書(評価書)に記載することを求めてはいません。

これら以外に認識しておくべきことは、IVSの導入は、不動産以外の一般の資産の評価にも影響を及ぼす可能性があることです。すなわち、IVSの評価対象は、不動産にとどまらず、機械・設備、無形資産、金融資産などにまで及んでいます。米国の鑑定基準であるUSPAPも不動産以外の資産の鑑定を評価対象として追加したことからすると、日本でもこうした動きが出てくる可能性があると思います。

 

(田辺氏)

  欧米流の資産評価基準であるIVSが、日本の実情を反映しない形で導入されると何かと不都合が生じることはありませんか。

 

(磯部)

 IFRSと同様に、IVSも「原則主義」になっており、具体的な実施方法はある程度まで各国の裁量に委ねられているので、その点での心配はあまりないかと思います。

 

(田辺氏)

 今後の抱負をお聞かせ下さい。

 

(磯部)

 不動産鑑定士に限らず弁護士、会計士などを含め、第三者である専門家が客観的な立場から述べる意見や評価が、実際のビジネスに影響を及ぼす時代になってきたという実感を持っています。そうした意味では、鑑定業務のやりがいも高まってきていますが、同時に強い責任感を持って仕事に取り組まなくてはならないと決意を新たにしております。

以上

住宅新報(2011年2月22日号)-第4回.pdf

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