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不動産資格の国際化、多様化(前篇)

不動産資格の国際化、多様化 

Change of Real Estate Professionals’ role in current global economy

 

磯部裕幸

日本ヴァリュアーズ株式会社 代表取締役

不動産鑑定士, CRE, FRICS

 

1           はじめに

 

 20115月にG-20が設立した、“Private Sector Taskforce of Regulated Professionals and Industries<PSTF>”(規制対象となる専門家、業界に関するプライベート・セクター・タスクフォース)は、同年9月、“Regulatory Convergence in Financial Professions and Industries”(財務会計上の専門家・業界における規制統一化)という報告書を発表した(http://www.ifac.org/publications-resourcesからダウンロード可能)。

 

 

 

 PSTFは、国際会計士連盟(IFAC)を事務局として8団体によって構成されている。すなわち、CFA InstituteINSOL International-International Association of Restructuring, Insolvency & Bankruptcy ProfessionalsIIF-Institute of International Accounting IASB(国際会計基準審議会)、IAA-International Actuarial AssociationICGN-The International Corporate Governance NetworkIIS-International Insurance SocietyIVSC-International Valuation Standard Council、の8団体である。

 9月に発表されたこの報告書では、会計分野で企業活動に参画する専門家などの基準の統一化の必要性がうたわれており、グローバルな資本市場の中で経済活動の安定化を達成する方法の一つとして、各種規制内容の統一化・コンバージェンスが急務であると提言している。

 PSTFを構成する各機関では、それぞれに規制内容の統一化・コンバージェンスを進めてきているが、この分野における不動産領域での進展は、何と言っても企業やファンドが保有する不動産の立地が多国化し、それら不動産の保有主体がマルチナショナル化してきていることだろう。保有主体が単一エンティティーであっても物件がグローバルに分散され、そこでの投資家が多国籍であることも日常的になりつつあるからである。

 その意味では、会計における専門分野の国際的な基準の統一化・コンバージェンスに向かう大きなミッションの一つであるPSTFに、評価スタンダードの国際基準を提示してきたIVSC-国際評価基準委員会が招聘されていることには重要な意味があると思われる。不動産評価のグローバル・スタンダード構築を目指して1981年に設立されたIVSCは企業会計の中での資産評価分野全般を担うところまで成長し、後述するようにIVSCが評価対象としてカバーするAsset=資産分野は、不動産の枠を大きく越え、会計上の資産すべてにわたってきているのである。

 そうした中、本稿では評価の専門家=鑑定士、valuerappraiserの業務範囲の多様化と、専門家資格のグローバル化について述べることとする。

 

2 IVS-International Valuation Standard 2011年版について

 

IVSCは、1981年に英国王立チャータード・サベイヤーズ協会RICS)と米国のAmerican Institute of Real Estate Appraisers(現在のAI)によるジョイントベンチャーとして創設された組織である。ロンドンに本部を置き、国連の経済社会理事会により承認された非政府組織(NGO)として活動している。主たる会員は世界各国の不動産などの鑑定士の団体ないし業界団体(Valuation Professional Organization)だが、評価等に関連する政府機関や民間の評価会社(Corporate member)、非営利の民間機関(Institution)、教育機関・学者,鑑定評価の利用・依頼機関(Client Member)なども会員対象となっており、この他に大手会計事務所、法律事務所、行政機関等がスポンサーとしても名を連ねている。会員は約50カ国、65機関に及んでおり、資産評価のグローバル・スタンダード構築に関する世界で唯一の団体である。

IVSCは、当初IAS(国際会計基準)に対応する国際的な共通ルールとしての不動産評価基準の開発を目的として活動していたが、現在では、会計基準審議会(IASB)が策定する国際財務報告基準(IFRS)に対応する形で、不動産に止まらず、動産、事業、金融資産など、さまざまな資産の国際評価基準を提示するに至っています。

2007年の改訂後、2008年の金融危機を経由する中で、評価の新しいグローバル・スタンダードに対する要請が高まり、20117月に新ヴァージョンが発行されたhttp://www.ivsc.org/で購入可能)。

 

 具体的には、Business ValueIntangible Asset、機械設備、不動産、建設途上の投資用不動産、金融商品に関する評価の原則的な方向性を示すと同時に、評価上の各種ターミノロジーの定義や業務の範囲、業務実施要領、レポーティングなどについてコンパクトに整理された。基準として記載はされなかったが、森林、鉱物資源、金融派生商品などについても今後working groupで検討が開始されることになっている。

 不動産をとりまく法律システムや取引慣行などは、各国の社会的・経済的背景によってそれぞれに異なっており、当然ながら、国ごとに評価に対する考え方や実務慣行も異なっている。従って、各国それぞれに定着している資格称号が世界統一資格のようなものに取って替わられることになることは恐らくないと言えるが、一方で経済・金融のグローバル化により、国際的な財務報告における資産評価に関しての世界共通化は必要不可欠になってきている。経済活動が国際化すれば、あるいはクライアントの活動領域がグローバル化すれば、専門家の国際化、多国籍化は当然必要になるということである。

そこで、世界的な認知度や高い信頼性を獲得しつつある不動産系の資格について次に述べることにする。

 

3 ASA-American Society of Appraisers(米国鑑定士協会-http://www.appraisers.org/)について 

 

米国ワシントンD.C.に本部を置くASAは、1936年に創立され1952年に法人化された団体だが、当初から不動産を含む多様な資産を対象としてきたという点で、他の不動産評価の専門家団体と一線を画してきた。カバーしている専門分野と,各分野で現在鑑定士の称号を付与されている人数は次の通りである。Business Valuation-2,182人、Gems and Jewelry-108人、Machinery and Equipment-1,146人、Personal Property-568人、Real property-800人。国際的には、カナダ、メキシコ、アルゼンチン、香港、日本、オーストラリアに支部がある。中国の評価団体との間で、今年業務提携に調印したので、支部設置の日も近いかもしれない。

評価、あるいは鑑定が、制度としては不動産のみを対象としてきている日本の常識の中で、ASAの認知度は必ずしも高くはなかったが、米国で1987年に設立されたThe Appraisal Foundation(米国鑑定財団)の下で策定されたUSPAP(米国鑑定業務統一基準)で、評価対象に不動産以外の資産が加えられてきていることにより、ASAの役割は一挙に高まってきたということができる。

不動産の評価に関しては、ASAの称号ではなくAI-Appraisal Instituteの提供するMAIが最も高いレベルにあると言われているが、前述の国際的な会計分野で重要性やニーズの高いBusiness ValuationMachinery and Equipment Valuationの専門家としてのASAの称号は、今や世界で最も権威が高いとさえ言われている。

(後篇に続く)

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