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第32回汎太平洋不動産鑑定士・カウンセラー会議(PPC)シンガポール大会に参加致しました

2025年9月29日~10月2日にシンガポールで開催された「第32回汎太平洋不動産鑑定士・カウンセラー会議(PPC)シンガポール大会」に当社から鑑定士8名が参加致しました。PPCは2年に1回参加国(オーストラリア、カナダ、インドネシア、韓国、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、台湾、米国)のいずれかの不動産鑑定団体が主催者となって開催されます。各国不動産市場の情報共有や研究成果の発表、ネットワーキングが行われ、グローバル化の波から免れ得ない不動産鑑定業界にとっても貴重な機会となっています。今回のテーマは「Valuation and Sustainability: Embracing The Challenges(評価と持続可能性:課題への挑戦)」で、ESGをはじめとして鑑定評価を取り巻く諸問題について意見交換がなされました。当社からは国際部の杉本が「団地とタワマン」をテーマに持続的な共同住宅の在り方について発表をいたしました。本稿では、当社から参加したメンバー各々のコメントを紹介させていただきたいと思います。

 

私はコロナ禍の中、リモートで実施されたマレーシア大会以来2回目の参加となりました。リモート大会でも講演の内容などは再現されておりましたが、やはりPPCの醍醐味は現地でのネットワーキングです。当社でも過去実施された本会議をきっかけとする案件の依頼やコミュニティが脈々と引き継がれています。海外から日本の不動産へ、日本から海外の不動産へ、不動産投資を中心とした評価の必要性は確実に多様化しています。私も一鑑定士としてその流れに取り残されないよう本大会を機に、気持ちを新たに日々の業務に取り組んでいきたいと思います。(長谷川(晃))

 

今回初めてPPCに参加し、シンガポールへ行ってまいりました。普段は証券化案件や国内案件を中心に評価しておりますが、各国に日本と同じく鑑定士が存在し、評価制度の違いはあれど、同じ不動産鑑定の専門家として研究内容を拝聴できたのは大変貴重な機会でしたし、とても刺激的でもありました。普段の業務においても、海外投資家が関係者という例は年々増えているように感じますし、鑑定評価の国際化が広まる中で、英語はもちろん、各国の動向等視野を広く持っていく必要があると改めて認識することができた大会でした。(瀧浪)

 

今回のPPCでは、AIやドローンを活用した鑑定評価の可能性や各国における制度的課題について知見を深めることができました。特に「持続可能性」が主要テーマとして議論され、最終日のテクニカルツアーではCity Developments Limitedによるプレゼンテーションも交えつつ商業施設の実例を視察し、理論と実務の双方からサステナブル開発の重要性を実感しました。また、各国の鑑定士との意見交換を通じて国際的なネットワークを広げ、評価制度や市場環境に関する多様な視点に触れることができた点も大きな収穫でした。今回の参加は今後の業務に活かせる極めて有意義な機会となりました。(山中)

 

今回のPPC参加自体、私の社会人人生として初めての海外出張でした。所属部署自体も国際部というわけではなく、英語もとりわけ得意とは言えない私が、貴重な機会に参加させて頂けたのは非常に有難い経験でした。グローバルな社会交流の場に身を置いたことがないという経験不足から、英語を使った海外案件やネットワーキングに少々消極的な姿勢を取っていましたが、PPCの参加をきっかけに、鑑定のみならず、ビジネスマンとしての視野が大きく広がった気がします。また、現地で活躍されていた方に共通するのは、非常にアクティブな活動家であり、言葉の節々からパッションを感じられる点でした。私も鑑定士として受動的に業務を遂行するに留まらず、視野を広く外を見て、能動的に活動できる人材になりたいと思いました。(清野)

 

PPC に初参加し、鑑定評価という業務の国際性を実感する貴重な機会となりました。世界各国から多くの専門家が集まり、評価制度や言語の違いを超えて意見交換が行われ、共通する課題と新たな方向性を学ぶことができました。特に普段の業務では取り入れることの少ないESG認証を取得した場合の賃料に対する上昇効果の検証や、AIを活用しSNSでの評判を不動産の評価に取り入れるなど新たな試みも見られ、私自身の鑑定実務にも大きな示唆を与えるものだったと思います。様々な視点から評価を捉えることの必要性を改めて認識し、得た知見を今後の業務に活かしていきたいと考えています(柴田)

 

初参加させて頂いたPPCでは、高度経済成長期時代に建てられた団地の再生と、2000年代以降急増するタワーマンションを切り口とし、日本における共同住宅の持続可能性について発表する機会を頂きました。また、20人ほどいた各国のスピーカーの発表には、AIやドローンを使った調査の可能性についてなど様々なテーマが含まれ、大変興味深く拝聴しました。シンガポールの都市開発庁へのツアーでは、同国のマスタープランについて説明を聞く機会があり、中でも地下に通路やインフラを建設する計画は、年々夏の暑さが激しさを増している日本にとっても参考になるものと感じました。PPCの参加者には国籍や男女問わず若い世代も多く見られ、鑑定業界における次世代の勢いを感じられました。休憩時間には、日本の不動産市場について質問される場面もあり、日ごろからアンテナを広く張っておく重要性を再認識しました。今回の貴重な経験を、今後の業務に活かせるよう、自己研鑽を重ねて参りたいと思います。(杉本)

 

“biodiversity“ 今回のPPCのスピーチの中で特に印象に残ったワードです。シンガポールは都市国家で、広さも東京23区程度で面的な広がりに限界があることから、海面を埋め立て、建物は上へ上へと高くなり、現在も開発が進んでいます。このような開発が進むシンガポールに対比するかのように、今回の主題の一つはESGで、テクニカルツアーも環境配慮型商業施設でした。開発・発展しつつも様々な生物が共存し、生態系を守り自然と共生することが、都市や不動産の価値を高めるということは理解できるものの、それを個別具体的にどう価格と結びつけるのかというのは、まだ明確には確立されていません。環境問題は世界的な問題ですが、環境整備を不動産評価にどう織り込むか、または環境というものそれ自体に価格を付けるのか、これから大きなテーマになっていくのではと感じています。(森脇)

 

今回は派遣団から少し離れた立ち位置で俯瞰的に参加するつもりでしたが、老若男女、鑑定士が各国から集まるこのイベントには醸成された独特の雰囲気があり、また各国に知人も相当増えていることからか、いつの間にか最後のデクニカルツアーまでどっぷりと浸かってしまいました。当社の若手にもベテランにも、日々の業務との向き合い方や、会社に対しての向き合い方、そして鑑定士個人としての自身への向き合い方に、何かしらのヒントがあったのではないかと思います。長谷川団長、取り纏めお疲れさまでした。(中澤)