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Eコマース市場拡大と物流施設の開発動向

 

5月下旬、国土交通省から2017年土地白書が発表されました。その中で、「成長分野による新たな土地需要を踏まえた土地・不動産の最適活用」として、物流施設の動向が挙げられています。

 

昨今のインターネットの普及によるEコマース市場の急成長に伴い、首都圏を中心に大型の物流施設需要が拡大しています。従来から物流施設立地として需要の高かかった臨海部のみならず、内陸部での開発事例も数多く見られるのが近年の特徴です。

 

これは、既存の放射状の高速道路を結ぶ環状線である圏央道の開通や、一部未開通だった外環道の整備が進行したことで、比較的地価の安い内陸部にも物流利便性の高いエリアが創出されたことが大きな要因となっています。

 

同白書にも荷主企業が重視する立地要因としては、生産拠点・消費地・主要幹線道路へのアクセスが挙げられており、交通インフラの整備によりこれらの要因が満たされたことで、内陸部での物流開発が活発化したといえます。また、物流施設で働く従業員の確保も重要な課題として挙げられ、郊外住宅地に近いことや、通勤の利便性が確保されているといった条件も、内陸部の物流適地に求められています。

 

米国でもアマゾンに代表されるEコマースの隆盛を受けて、ウォルマートのような巨大店舗が次々と閉鎖を余儀なくされています。物流適地の土地需要増大は継続する一方で、既存小売店舗の閉鎖や再編のほか、その賃料や土地価格への影響など、我が国でも同様の傾向が生じることが予想されます。(小室)